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元請の指名停止はどこで決まるか|労働災害と監督処分の関係

約6分で読めます 安全ドリル+編集部
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共通の現場で起きる転倒の場面(安全ドリル+の教材より)
安全ドリル+の教材より

重大な労働災害が起きたときの指名停止措置と建設業法上の監督処分の違い、それぞれの決まり方と発注者による違いを整理します。

死亡災害が発生した現場の元請企業に対して、発注者から「しばらく指名を見合わせる」という連絡が入ることがある。この指名停止という措置は、建設業法上の監督処分とは別の仕組みであり、混同したまま説明すると社内でも認識がずれてしまう。営業担当者が「監督処分は受けていないから問題ない」と考えていても、発注者独自の指名停止を同時に受けている、という食い違いも起こりうる。

この記事では、指名停止措置と建設業法上の監督処分がそれぞれ何を根拠に、誰が決めるものなのかを整理する。断っておくと、指名停止の具体的な期間や基準は発注者ごとに異なり、本記事で示すのはあくまで国の運用の枠組みである。両者を切り分けて理解しておくことは、災害発生後の対応を整理するうえでも役に立つ。

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指名停止措置とは

指名停止措置とは、発注者が指名競争入札や競争参加資格審査において、一定期間、特定の建設業者を指名や参加の対象から除外する措置である。公共工事の入札及び契約の適正化を図るための運用指針では、談合や贈収賄等の不正行為を行った者に対して、発注者が指名停止等の措置を厳正に実施することが求められている(出典:国土交通省「発注関係事務の運用に関する指針」)。

指名停止は、建設業法に基づく行政処分ではなく、発注者が自らの契約事務のルールとして定める措置である。したがって、根拠となる要領も、国・都道府県・市区町村・独立行政法人など、発注者ごとに別々に定められている。

国が定める運用指針では、談合・贈収賄等の不正行為について、発注者が指名停止等の措置を厳正に実施することとあわせて、談合があった場合の請負者への賠償金支払請求を厳正に行うことも求められている。指名停止は、こうした発注者間で共通する運用の考え方の上に、それぞれの発注者が独自の要領を組み立てている構造になっている。

対象となる行為も、談合・贈収賄のような契約手続き上の不正行為に限らない。労働災害を含む安全管理上の問題、施工不良、暴力団関係者との取引など、幅広い事由が指名停止の対象として想定されている発注者が多い。どの事由がどの程度の期間の指名停止につながるかは、要領ごとに定められた基準表のような形で示されていることが一般的である。

発注者ごとに基準が違う

ここが最も誤解されやすい点である。 指名停止の対象になる行為、停止期間、公表の有無は、発注者が独自に定める指名停止措置要領によって決まる。同じ死亡災害を起こしても、発注者Aでは一定期間の指名停止、発注者Bでは異なる対応になることがあり、一律の基準は存在しない。

複数の発注者と取引がある企業では、それぞれの指名停止措置要領を把握しておく必要がある。「国の基準ではこうだったから、この自治体でも同じはず」という前提で説明すると、実態と食い違うことがある。

死亡災害が起きたときの流れ

労働災害が発生すると、まず労働基準監督署による調査・臨検が入り、必要に応じて是正勧告や、悪質な場合は書類送検に至る(詳しくは書類送検される安全衛生法違反で整理している)。これとは別に、発注者側では、災害の重大性や施工体制の問題を踏まえて、指名停止の要否を検討する流れになる。

国の直轄工事に関わる建設業法上の監督処分では、役職員が労働安全衛生法違反により刑に処せられた場合は指示処分、工事関係者に死亡者又は3人以上の負傷者を生じさせ、業務上過失致死傷罪等の刑に処せられた場合で特に重大な事故と認められるときは、営業停止処分の対象になるとされている(出典:国土交通省「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」)。この監督処分は国土交通大臣が行うものであり、発注者が個別に決める指名停止とは別の手続きである。

期間の目安

指名停止の期間は、要領ごとに、事案の重大性に応じた区分が設けられていることが多い。建設業法上の営業停止処分についても、上で触れたとおり、死亡者又は3人以上の負傷者を生じさせ、業務上過失致死傷罪等の刑に処せられた特に重大な事故の場合は3日以上の営業停止とする基準が示されている。ただし、これは国が定める監督処分の基準であり、発注者ごとの指名停止の期間とは別物である。

自社が対象となる指名停止の期間を正確に知りたい場合は、当該発注者が公表している指名停止措置要領を確認する必要がある。

建設業法上の監督処分との違い

指名停止と建設業法上の監督処分は、根拠も、決める主体も、効果の範囲も異なる。指名停止は発注者が自らの契約相手として選ぶかどうかを決める措置であり、その発注者との取引にのみ効果が及ぶ。建設業法上の監督処分(指示処分・営業停止処分・許可取消し)は、国土交通大臣又は都道府県知事が建設業許可そのものに対して行う行政処分であり、営業停止処分を受ければ、原則としてすべての発注者との取引に影響する。

同じ災害を原因としても、この2つは別々の手続きで進む。片方の対応だけを終えれば十分だと考えると、もう一方の対応が漏れてしまう。社内の窓口も、建設業法上の監督処分は許可行政庁とのやり取りが中心になり、指名停止は個々の発注者とのやり取りが中心になるため、担当部署が分かれていることが多い。両方の状況を横断的に把握できる担当を決めておくと、対応漏れを防ぎやすい。

情報がどこまで公表されるか

建設業法上の監督処分は、多くの場合、処分を行った行政庁のウェブサイト等で公表される。指名停止についても、発注者が指名停止措置を公表する運用を取っている場合がある。ただし、公表の範囲・期間・様式は発注者ごとに異なり、一律の説明はできない。

公表される情報を確認する側の視点も持っておくとよい。元請として協力会社を選定する際に、相手方が過去に監督処分や指名停止を受けていないかを確認する運用を取る企業もある。取引先を選ぶ判断材料としても、こうした公表情報は活用されている。

自社が過去に受けた処分・措置の記録は、経営事項審査の申請時に確認を求められることがあるため、社内で正確に把握し、記録として整理しておく必要がある。

複数の支店・現場を抱える企業では、ある現場で受けた指名停止の情報が、別の支店の営業担当に伝わっていないという事態も起こりうる。指名停止・監督処分の情報を社内で一元的に把握し、入札参加の判断に確実に反映できる体制を整えておくことが、同じ相手先への重複した入札参加という失敗を防ぐことにつながる。

制度の詳細や個別の適用は、発注者の定める基準および所轄の行政機関にご確認ください。

災害発生直後の初動対応は、災害直後の3日間で整理している。


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よくある質問

Q. 指名停止と建設業法上の営業停止処分は同じものですか

異なります。指名停止は発注者が独自に定める契約事務上の措置で、その発注者との取引にのみ影響します。営業停止処分は国土交通大臣又は都道府県知事が建設業許可に対して行う行政処分で、原則としてすべての発注者との取引に影響します。

Q. 死亡災害が起きると、必ず指名停止になりますか

発注者ごとに指名停止措置要領が異なるため、一律には言えません。事案の重大性や施工体制の問題の有無などを踏まえて、発注者が個別に判断します。

Q. 指名停止の情報はどこで確認できますか

発注者ごとに公表の有無・方法が異なります。取引のある発注者が公表している指名停止措置要領や公表ページを個別に確認する必要があります。

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