「安全対策にどれだけ力を入れても、成績評定には反映されないのではないか」。公共工事の現場所長から、こうした声を聞くことがある。実際には、多くの発注者の評定項目に安全対策の欄が設けられている。ただし、その仕組みは発注者ごとに細部が異なり、一律に説明できるものではない。
この記事では、工事成績評定という制度の枠組みと、安全対策がどのように評価に関わるか、そして次の受注にどうつながるかを、国の運用指針を軸に整理する。
「工事成績評定」という言葉自体は、必ずしも安全対策だけを指すものではない。施工の出来ばえ、工程管理、創意工夫など複数の観点をあわせて採点する制度の一部として、安全管理が組み込まれている。まずは制度全体の枠組みを押さえたうえで、安全対策がどこに位置づけられているかを見ていく。
安全ドリル+を1問だけ試す · 10秒の映像 → 3択
考えて答える
この作業の どこが 危ない?
工事成績評定とは
工事成績評定とは、公共工事の完成後に発注者が施工状況を検査し、その結果を点数化して記録する制度である。発注者は工事完成の通知を受けると、契約書等に定める期限内に完成検査と技術検査を行い、その結果を工事成績評定に反映させて受注者へ通知する(出典:国土交通省「発注関係事務の運用に関する指針」)。
この運用指針は、公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)第24条に基づいて国が定めているもので、各発注者は工事成績評定を適切に行うための要領や技術基準をあらかじめ策定するものとされている(出典:e-Gov法令検索 公共工事の品質確保の促進に関する法律)。国の直轄工事では「請負工事成績評定要領」(国土交通省)がこの要領にあたる。
ここで強調しておきたいのは、評定の具体的な項目・配点・運用は発注者によって異なるという点である。 国の地方整備局、都道府県、市区町村、独立行政法人など、発注者ごとに独自の評定要領を持っており、本記事で扱うのはあくまで国の運用指針が示す全体の枠組みにとどまる。
工事成績評定の結果は、発注者間で相互に利用できるよう、データベース化に向けた取り組みも進められている。1つの発注者向けに残した評定結果が、別の発注者との取引でも参照される可能性がある構造になりつつあり、評定を「その工事だけの点数」と捉えるより、企業としての実績の積み重ねと捉えるほうが実態に近い。
安全対策が評価される項目
工事成績評定は、施工体制、施工状況、出来形及び出来ばえ、そして安全管理を含む複数の項目に分かれて採点される構成が一般的である。多くの発注者の評定要領で、安全管理・工程管理といった項目が設けられており、現場での安全パトロールの実施状況、災害防止協議会の開催状況、作業員への安全教育の実施状況などが確認の対象になりうる。
ただし、どの項目にどれだけの配点が振られているかは要領ごとに異なり、一律の基準を示すことはできない。自社が受注する発注者の評定要領を個別に確認し、どの項目が重視されているかを把握しておく必要がある。
事故が起きたときの減点
工事中に労働災害が発生した場合、その事実そのものが自動的に評定点を大きく減らすわけではない。ただし、災害の発生に伴って施工体制や安全管理に問題があったと判断されれば、その項目の評価が下がる方向に働きうる。
また、重大な労働災害によって建設業法上の監督処分(指示処分・営業停止処分等)を受けた場合、その事実が経営事項審査や以後の入札参加資格に影響することがある(詳しくは経営事項審査と労働災害の関係で整理している)。工事成績評定と経営事項審査は別の制度だが、どちらも「その現場で何が起きたか」という事実の積み重ねを土台にしている点は共通している。
加点につながる取り組み
減点を避けるだけでなく、積極的な取り組みが加点につながる場合もある。新技術の活用、地域への貢献、施工の工夫などとあわせて、安全管理に関する自主的な取り組みが評価項目に含まれる要領も見られる。
現場で実際に何を積み上げればよいかは、発注者が公表している評定要領や、工事ごとの監督員との事前のすり合わせで確認するのが確実である。抽象的に「安全に気をつけました」と説明するより、実施した取り組みを記録として提示できる状態にしておくほうが、監督員の評価にもつながりやすい。
若手技術者や女性技術者の登用、地域精通度の高い建設業者への配慮など、施工実績の評価にあたっては競争性の確保と担い手の育成の両立が求められている。安全管理の取り組みも、こうした全体の評価方針のなかの一要素として位置づけられている点を踏まえておくと、評定への向き合い方を考えやすい。
評定が次の受注に効く仕組み
工事成績評定の結果は、その工事限りのものではない。多くの発注者で、過去の工事成績評定の平均点が、次の入札参加資格や総合評価落札方式における技術評価点の算定要素として使われる。評定点が低い状態が続くと、有利な条件での入札参加が難しくなる場合がある。
また、評定点は経営事項審査の完成工事高等とは別に、発注者独自の格付けや、指名競争入札における選定にも影響しうる。1つの工事の評定が、その先の受注機会全体に波及する構造になっている点は、現場所長だけでなく経営層にも伝えておく価値がある。
記録の残し方
評定を有利にするための記録づくりというより、評定の場で「実際に何をしたか」を説明できる状態を日頃から作っておくことが基本になる。安全パトロールの実施記録、協議会の開催記録、作業員への教育実施記録などは、監督員から確認を求められたときにすぐ提示できるよう、日付・対象者・内容が分かる形で整理しておく。
紙の記録を都度探し出す運用では、検査の直前になって過去の記録をかき集める作業が発生しやすい。日々の教育実施が記名で自動的に積み上がる仕組みがあれば、検査のたびに証跡を作り直す手間は生じない。
複数の現場を掛け持ちする所長ほど、この記録づくりは後回しになりやすい。ある現場での取り組みを別の現場に横展開できず、同じ発注者からの評定で現場ごとに評価がばらつく、という事態も起こりうる。現場を横断して記録の状況を一覧できる状態にしておくことは、評定への備えとしても意味を持つ。
評定は一度受けて終わりではなく、工事の完成のたびに繰り返し受けるものである。1件ごとの評定を丁寧に積み上げる姿勢そのものが、企業としての施工能力の見える化につながっていく。
制度の詳細や個別の適用は、発注者の定める基準および所轄の行政機関にご確認ください。
稟議の場で安全対策を経営に説明する視点は、経営に安全対策を通すにはで整理している。
実際の画面を1分半で試す
QRを読むと10秒の映像が5本流れ、最後の1問だけが記名の記録として残ります。 アプリのインストールもログインも要りません。
- 職人が見る画面をそのまま試す
- サービスガイド(PDF) — 導入の流れと記録の様式
- 料金 — 1現場あたりの月額
よくある質問
Q. 工事成績評定の安全管理項目は、どの発注者でも同じ配点ですか
いいえ。国の地方整備局、都道府県、市区町村など、発注者ごとに評定要領・配点が異なります。本記事で扱ったのは国の運用指針が示す全体の枠組みであり、個別の配点は自社が受注する発注者の要領で確認する必要があります。
Q. 労働災害が起きると、必ず評定点が下がりますか
災害の発生そのものが自動的に評定点を大きく下げるわけではありませんが、施工体制や安全管理に問題があったと判断されれば、該当項目の評価が下がる方向に働く可能性があります。個別の判断は監督員及び発注者の基準によります。
Q. 評定点が低いと、次の工事の入札に参加できなくなりますか
参加できなくなるとは限りませんが、多くの発注者で評定点の平均が入札参加資格や技術評価点の算定に使われるため、条件面で不利になる場合があります。詳細は発注者の公表資料を確認してください。