安全ドリル+ 現場の安全教育を朝礼前の1分半で

熱中症の既往がある人をどう配置するか|再発を防ぐ現場の管理

約7分で読めます 安全ドリル+編集部
熱中症 再発熱中症 既往暑熱順化建設業安全衛生管理
共通の現場で起きる熱中症の場面(安全ドリル+の教材より)
共通 熱中症 安全ドリル+の教材より

熱中症の既往や基礎疾患は、暑熱順化・配置・当日の体調確認にどう反映させるべきか。厚労省ガイドラインにそって再発を防ぐ運用を整理しました。

一度熱中症になった人は、二度目が起きやすい。この経験則は、現場で働く人の実感としても、厚生労働省のガイドラインが示す考え方としても共通している。既往がある人を現場からただ外すのではなく、暑熱順化・配置・当日の確認という具体的な運用に落とし込むことが、再発を防ぐ現実的な対応になる。

この記事では、厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」にそって、既往の把握方法、暑熱順化という考え方、配置と休憩の組み替え、当日の体調確認、記録と引き継ぎまでを整理する。熱中症対策の義務化そのものについては熱中症対策の義務化で現場がやること、猛暑期の日々の運用については猛暑期の現場をどう回すかで扱っている。

既往がある人への配慮は、当日の配置や休憩の組み方に反映されて初めて意味を持つ。安全ドリル+は、その日の注意点を短い動画で毎朝繰り返し届ける仕組みとして使える。

安全ドリル+を1問だけ試す · 10秒の映像 → 3択

熱中症は繰り返しやすい

熱中症は繰り返しやすいという特徴を持つ。厚生労働省のガイドラインは、熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾病として、糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患、感冒等、下痢等を挙げている。血糖値が高い場合は尿への糖の漏出により脱水状態を生じやすくなること、高血圧症や心疾患で利尿作用のある薬を服用している場合は脱水状態を生じやすくなることなどが、その理由として説明されている(出典:厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」)。

一度熱中症で救急搬送されるなどした人は、身体が暑熱環境に対して脆弱な状態が残っている場合がある。既往を「過去の出来事」として扱うのではなく、当面の間は特に注意が必要な状態として捉える視点が必要である。

既往を把握する方法

既往を把握する方法とは、本人からの申告に基づいて、熱中症の既往や、発症に影響するおそれのある疾病の有無を把握することを指す。ガイドラインは、健康診断の項目に血糖検査・尿検査・血圧の測定・既往歴の調査等が含まれていることを踏まえ、異常所見があると診断された場合には医師等の意見を聴き、必要な措置を講じることを求めている(前掲・厚生労働省ガイドライン)。

現場での実務としては、入場時の体調申告書や、朝礼前の一言確認の中で、既往の有無を聞き取る運用が考えられる。ただし、これは健康情報の取得にあたるため、目的をあらかじめ本人に説明し、必要な範囲の担当者だけが把握する体制にしておく必要がある。ガイドラインも、緊急連絡先や既往歴を記載したカードを本人が携行するといった工夫を、労働者と異なる場所で就業する人も含めた対応例として挙げている。既往歴の調査は、そもそも安衛則が定める定期健康診断の項目に含まれている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。

暑熱順化という考え方

暑熱順化という考え方とは、繰り返し暑熱環境にさらされることで、身体が徐々に暑さに適応していく現象を指す。ガイドラインは、暑熱順化の状況に応じてWBGT基準値の目安を分けており、暑熱順化していない作業者は、より低いWBGT値でも休憩や作業中止の対応が必要になるとしている(前掲・厚生労働省ガイドライン)。

暑熱順化には、7日以上かけて暑熱環境での身体的負荷を段階的に増やしていく計画的なプログラムが必要とされている。夏季休暇などで熱へのばく露が4日以上中断すると、暑熱順化の効果は失われやすいとされ、連休明けなどは、暑熱順化されていない状態として扱うことが望ましいとされている。既往がある人ほど、この暑熱順化の期間を十分に確保することが再発防止につながる。

配置と休憩の組み替え

配置と休憩の組み替えとは、既往がある人や暑熱順化が不十分な人について、作業内容や休憩の取り方を通常と変えることを指す。日陰の少ない屋外作業や、鉄板の上など特に暑さが厳しい場所を避ける、休憩の頻度を増やす、涼しい時間帯に重い作業を割り振るといった対応が考えられる。

配置の見直しは、本人を現場から排除するためではなく、同じ現場で安全に働き続けるための調整である。この考え方は、持病を抱える作業員への配慮を扱った高血圧・糖尿病を抱えた作業員|現場でできる配慮と限界とも共通している。既往を理由に一律で配置転換や現場からの除外を決めるのではなく、産業医の意見も踏まえながら個別に判断する必要がある。

当日の体調確認

当日の体調確認とは、作業開始前に、朝食の摂取状況、睡眠不足の有無、前日の飲酒、体調の変化などを確認することを指す。ガイドラインは、入職後1週間未満の作業者や、夏季休暇等で熱へのばく露から4日以上離れていた作業者について、職長等の管理者が巡視の頻度を増やすなど、特に配慮することを求めている(前掲・厚生労働省ガイドライン)。

既往がある人については、当日の体調確認をより丁寧に行う必要がある。休憩場所に体温計や体重計を備え、必要に応じて身体の状況を確認できるようにすることも、ガイドラインが挙げる対応例のひとつである。

単独作業を避ける

単独作業を避けることは、既往がある人が体調を崩した場合に、早期に発見し対応するための基本的な対策である。熱中症は、当日または前日の睡眠不足、食欲低下、下痢や感冒様症状といった比較的軽微な体調変化が先行し、それが暑熱ばく露と重なることで急激に重症化する例が多いとされている(前掲・厚生労働省ガイドライン)。

軽微な変化の段階で周囲が気づくためには、既往がある人を単独で作業させず、近くに人がいる状態を保つことが有効である。バディ制のように、互いの状態を確認し合う運用も、この考え方に沿ったものである。

記録と引き継ぎ

記録と引き継ぎとは、既往の把握と、それに基づいて講じた配慮の内容を、日々の作業体制の中で確実に申し送ることを指す。既往の情報は、把握した担当者だけが知っていて、当日の配置を決める班長には伝わっていない、という状態を避ける必要がある。

一方で、健康情報である以上、記録の共有範囲は必要最小限にとどめる必要がある。誰が何を知っているべきかを明確にし、それ以上に広げない運用が求められる。個別の事案の判断は、産業医または所轄の労働基準監督署にご確認ください。

まとめ

安全ドリル+は、当日の注意点を朝礼前の短い動画で届け、記名の記録として残す仕組みです。熱中症対策の義務化の全体像は熱中症対策の義務化で現場がやることを、猛暑期の日々の運用は猛暑期の現場をどう回すかをご覧ください。日々の記録を積み上げる基本的な考え方は毎日のKY活動を記録に変えるを参照してください。詳しくは安全ドリル+をご覧ください。


実際の画面を1分半で試す

QRを読むと10秒の映像が5本流れ、最後の1問だけが記名の記録として残ります。 アプリのインストールもログインも要りません。


よくある質問

Q. 熱中症の既往がある人は高所作業や屋外作業をさせてはいけませんか

一律に禁止する考え方ではありません。暑熱順化の状況や当日の体調を踏まえ、配置や休憩を調整しながら個別に判断することが求められます。

Q. 既往の情報は誰でも把握してよいのですか

健康情報にあたるため、必要な範囲の担当者に限って共有する運用が求められます。目的を本人に説明し、同意を得たうえで取得することが基本です。

Q. 暑熱順化はどのくらいの期間が必要ですか

厚生労働省のガイドラインは7日以上かけた計画的なプログラムを示しています。休暇などで熱へのばく露が4日以上中断すると、順化の効果が失われやすいとされています。

Q. 単独作業を避けられない現場ではどうすればよいですか

定期的な巡視の頻度を増やす、連絡手段を確保するなど、代替の見守り体制を検討する必要があります。個別の対応は産業医にご相談ください。

Q. 既往歴を記載したカードを本人に携行させてよいですか

厚生労働省のガイドラインも、緊急連絡先や既往歴を記載したカードの携行を対応例として挙げています。本人の同意のもとで導入することが前提になります。

熱中症 再発熱中症 既往暑熱順化建設業安全衛生管理健康配慮