ストレスチェックという言葉は広く知られているが、「結果は誰が見るのか」「事業者に伝わってしまうのではないか」という不安から、正直に回答しない労働者もいる。この不安の多くは、制度の仕組みを正しく知らないことに起因する。
この記事では、ストレスチェックの対象事業場、実施者の要件、結果が事業者に直接渡らない仕組み、高ストレス者への面接指導までを、安衛法の条文にそって整理する。ここを誤って伝えると、労働者に「正直に答えると不利益になる」という誤解を与え、制度そのものが機能しなくなる。
ストレスチェックの仕組みを正しく伝えることは、制度そのものへの信頼につながる。安全ドリル+は、こうした制度説明を含めた日々の教育を、朝礼前の短い動画で繰り返し届ける仕組みとして使える。
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この映像の どこが 危ない?
ぬれた床での電動工具による感電
水と 電気は 一番 危ない 組み合わせ。手を ふいてから 触る。ほかの 2つも 感電の もとに なるが、この 映像に 写っているのは 水と やぶれた コードだ。
ストレスチェックとは
ストレスチェックとは、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査であり、事業者に対してその実施が義務づけられている(安衛法第66条の10、出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。質問票への回答をもとに、ストレスの原因、心身の自覚症状、周囲のサポート状況などを把握する仕組みである。
制度の目的は、労働者本人がストレスの状態に気づき、必要に応じて医師の面接指導につなげる一次予防にある。個々の労働者を選別したり、事業者が労働者の状態を監視したりするための制度ではない。
対象になる事業場
対象になる事業場とは、常時50人以上の労働者を使用する事業場である。50人以上の事業場には年1回以上の実施が義務づけられている。50人未満の事業場については、当分の間、努力義務とされている。
事業場単位での判断になる点に注意が必要である。企業全体で50人を超えていても、個々の事業場(現場事務所や支店など)の労働者数が50人未満であれば、その事業場は当分の間、努力義務の対象になる。建設現場のように、常駐する労働者数が変動しやすい業態では、どの単位を「事業場」として数えるかを事前に整理しておく必要がある。
誰が実施者になれるか
誰が実施者になれるかについては、医師、保健師、厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師のいずれかに限られている。実施者には、ストレスチェックの企画と結果の評価という中心的な役割が求められる。
産業医が選任されている事業場では、産業医が実施者を兼ねることが多い。産業医の選任要件や職務については、産業医は50人から選任|専属が必要な規模と職務を整理するで扱っている。実施者は、事業者から指揮命令を受けて評価内容を左右されない立場を保つ必要がある。実施の頻度や具体的な手続きは、労働安全衛生規則にも定められている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。
結果は事業者に渡らない
結果は事業者に渡らないという点が、この制度の中核をなす仕組みである。ストレスチェックの結果は、実施者から労働者本人に直接通知される。本人の同意がない限り、実施者は結果を事業者に提供してはならない。
この仕組みがあるからこそ、労働者は不利益を恐れずに正直に回答できる。事業者側がこの点を正しく理解していないと、「結果を教えてほしい」と実施者に求めてしまい、制度の信頼を損なうことになりかねない。本人の同意なく結果を事業者に提供することは、法令が明確に禁じている行為である。
高ストレス者への面接指導
高ストレス者への面接指導とは、ストレスチェックの結果、高ストレスと判定され、面接指導が必要と実施者が認めた労働者が、本人の申出により受けられる医師の面接指導を指す。面接指導の申出をしたことを理由に、事業者が労働者に不利益な取扱いをすることは禁じられている。
面接指導の結果、医師が必要と判断すれば、事業者は就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの措置を講じる必要がある。この措置の枠組みは、一般健康診断の事後措置と同様の考え方に立っている。
申出は本人の意思に委ねられており、事業者が「高ストレスと判定された人」を特定して申出を促すことはできない。制度の建て付け上、事業者は誰が高ストレスと判定されたかを知ることができないためである。
集団分析の使い方
集団分析の使い方とは、個人が特定されない形で、部署や職種単位のストレス傾向を集計し、職場環境の改善に活用する取組みを指す。集団分析の実施は努力義務とされている。
集団分析の結果は、個人のストレス状態を明らかにするものではなく、職場全体の傾向を把握するための情報である。ある工種や班で高ストレス傾向が見られた場合、その原因を個人の問題として片づけるのではなく、作業配分や人員体制など、職場環境の側に目を向けるきっかけとして活用することが望ましい。
現場での実施方法
現場での実施方法とは、常駐場所が変わりやすい建設現場の労働者に対して、どのようにストレスチェックの機会を確保するかという実務上の課題である。オンラインでの質問票回答であれば、現場に縛られず実施できる。紙の質問票を使う場合は、記入した本人以外が中身を見ない形で回収・送付する経路を確保する必要がある。
協力会社の作業員は、それぞれが所属する会社の労働者として扱われるため、元請が一括してストレスチェックを実施する制度ではない。誰が実施義務を負うのかは、雇用関係に基づいて判断する必要がある。個別の判断は、産業医または所轄の労働基準監督署にご確認ください。
まとめ
- ストレスチェックは常時50人以上の事業場に年1回以上の実施が義務づけられ、50人未満は当分の間、努力義務である
- 実施者は医師・保健師・所定の研修を修了した歯科医師等に限られる
- 結果は実施者から本人に直接通知され、本人の同意なく事業者に提供することはできない
- 高ストレス者は本人の申出により医師の面接指導を受けられ、申出を理由にした不利益取扱いは禁じられている
- 集団分析は個人を特定せず、職場環境の改善に活用する取組みである
- 常駐場所が変わりやすい建設現場では、実施方法と実施義務の所在をあらかじめ整理しておく必要がある
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よくある質問
Q. 50人未満の建設現場ではストレスチェックをしなくてよいですか
事業場単位で常時50人未満であれば、当分の間は努力義務です。ただし努力義務であっても実施することが望ましいとされています。
Q. 結果が悪かった人を会社が知る方法はありますか
本人の同意がない限り、実施者が結果を事業者に提供することは禁じられています。事業者が個人の結果を知る手段は制度上ありません。
Q. 高ストレスと判定されたら必ず面接指導を受けなければなりませんか
面接指導は本人の申出があって初めて実施されるものであり、義務ではありません。申出をするかどうかは本人の意思に委ねられています。
Q. 協力会社の作業員のストレスチェックは元請が行うのですか
雇用関係にある事業者が実施義務を負います。元請が一括して協力会社の作業員のストレスチェックを実施する制度ではありません。
Q. 集団分析の結果から特定の作業員のストレス状態が分かってしまいませんか
集団分析は個人が特定されない集計方法で行うことが求められており、個人のストレス状態を明らかにする趣旨ではありません。