高所作業車とは、作業床を上昇させて高所での作業を行う車両系の機械をいい、天井や梁との挟まれ、走行中の逸走、作業床からの墜落など、複数の型の災害を起こしうる機械です。厚生労働省が公表した令和7年の労働災害発生状況(確定値)によると、建設業における「はさまれ・巻き込まれ」による休業4日以上の死傷者数は1,496人に上ります(出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定)」)。この記事では、高所作業車で起きる災害の型を整理し、条文が定める対策を確認します。
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高所作業車で起きる災害の型
高所作業車の災害は、大きく分けると転倒・逸走、挟まれ、墜落の3つの型に分類できます。転倒・逸走は、地盤の状態やアウトリガーの張り出し不足によって機体そのものが倒れる、あるいは走行時に意図しない方向へ動き出すことで起きます。挟まれは、作業床を上昇させたまま移動した際に、天井の梁や配管との間に作業者の頭や体が挟まれることで起きます。墜落は、作業床の手すりを越えて身を乗り出す、あるいは安全帯を使わずに作業することで起きます。
同じ機械であっても、走行時と作業時とでは注意すべき点が異なります。この違いを整理せずに一括りで「気をつけましょう」と伝えるだけでは、実際の作業で何を確認すべきかが伝わりません。
走行時と作業時の区別
労働安全衛生規則第百九十四条の二十は、労働者が作業を行う作業場において高所作業車を走行させるときは、当該高所作業車の作業床に作業従事者を乗せてはならないと定めています。ただし、平坦で堅固な場所で走行させる場合には、誘導者を配置しその者に誘導させること、一定の合図を定め誘導者に行わせること、あらかじめ作業床の高さやブームの長さ等に応じた適正な制限速度を定め運転者に運転させることという措置を講じたときに限り、例外を認めています(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。
この条文が示しているのは、走行と作業床への搭乗は本来別の場面として扱うべきものであり、両方を同時に行うことは例外的な措置のもとでのみ認められるという考え方です。作業床を上げたまま次の作業位置へ移動するといった操作は、この例外に該当する条件を満たしているかを確認する必要があります。
上部操作と下部操作の取り合い
高所作業車の操作は、作業床にいる作業者が行う上部操作と、地上にいる者が行う下部操作の2系統に分かれていることがあります。労働安全衛生規則第百九十四条の十二は、作業床以外の箇所で作業床を操作するときは、作業床上の労働者と作業床以外の箇所で作業床を操作する者との間の連絡を確実にするため、一定の合図を定め、当該合図を行う者を指名してその者に行わせる等必要な措置を講じなければならないと定めています(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。
上部と下部のどちらが操作しているかが曖昧なまま作業を進めると、片方が動かそうとした瞬間に、もう片方が想定していない動きが起きます。合図を決めておくだけでなく、今どちらが操作権を持っているかを、作業のたびに声に出して確認する運用が欠かせません。
天井・梁との挟まれ
作業床を上昇させた状態で機体を移動させると、進行方向の天井や梁、配管との間に作業者が挟まれる危険が生まれます。作業床にいる作業者からは、自分の頭上や背後にある障害物が視野に入らないことが多く、気づいたときには接触寸前になっていることがあります。
上昇させたまま移動する必要がある場合は、あらかじめ進行経路上の障害物の高さを確認し、作業床の高さに余裕を持たせておくことが基本になります。天井の低い建屋内や配管が輻輳する場所では、上昇させたままの移動そのものを避け、いったん作業床を下げてから移動するという判断も選択肢に入ります。
作業床からの墜落と安全帯
作業床には手すりが備わっていますが、手すりの内側にとどまっていても、身を乗り出す姿勢を取れば墜落の危険は残ります。作業床の外側に手を伸ばす必要がある場面では、手すりを頼るのではなく、墜落制止用器具を作業床内の取り付け設備に確実に掛けておく必要があります。
作業床が傾いた状態で機体が停止する、あるいは急な操作で作業床が揺れるといった場面では、手すりにつかまっているだけでは体を支えきれないことがあります。墜落制止用器具を使用している状態であれば、こうした揺れが起きても墜落そのものを防ぐことができます。
作業計画と点検
労働安全衛生規則第百九十四条の九は、高所作業車を用いて作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に係る場所の状況、当該高所作業車の種類及び能力等に適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならないと定めています。第百九十四条の十は、作業の指揮者を定め、その者に作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならないとも定めています(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。
さらに第百九十四条の十一は、高所作業車の転倒又は転落による労働者の危険を防止するため、アウトリガーを張り出すこと、地盤の不同沈下を防止すること、路肩の崩壊を防止すること等必要な措置を講じなければならないと定めています。第百九十四条の十六は、積載荷重その他の能力を超えて使用してはならないとも定めています(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。作業計画・指揮者・アウトリガーの張り出し・積載荷重という要素は、それぞれ独立した条文で定められており、どれか1つを満たせば足りるという関係にはありません。
資格の範囲
高所作業車の運転には、作業床の高さに応じて技能講習または特別教育の受講が必要です。運転できる範囲は、受講した講習の種類によって決まっており、資格の範囲を超えた高さの機械を運転することは認められません。作業床の高さだけでなく、走行の操作を行うかどうかによっても必要な資格が変わるため、その日に使う機械の仕様と作業内容に応じた資格を確認しておく必要があります。
高所作業車の運転資格については、高所作業車の資格にまとめている。毎日のKY活動をどう記録に変えるかは、毎日のKY活動を記録に変えるを参照してほしい。
本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、社会保険労務士等の専門家、または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。
まとめ
- 建設業における「はさまれ・巻き込まれ」の死傷者数は令和7年で1,496人に上ります(令和7年確定値、厚生労働省)
- 労働安全衛生規則第百九十四条の二十は、走行時に作業床へ作業従事者を乗せることを原則禁止し、例外には誘導者・合図・制限速度の措置を求めています
- 第百九十四条の十二は、作業床の上部操作と下部操作の間で連絡を確実にする合図を義務づけています
- 第百九十四条の九・十は作業計画と作業指揮者を、第百九十四条の十一はアウトリガーの張り出し等の転倒防止措置を定めています
- 作業床の外側に手を伸ばす場面では、手すりだけに頼らず墜落制止用器具を確実に使用する必要があります
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よくある質問
Q. 作業床を上げたまま移動してもよいですか
労働安全衛生規則第百九十四条の二十は、平坦で堅固な場所で誘導者・合図・制限速度という措置を講じたときに限り、作業床に人を乗せた走行を認めています。措置を講じない状態での走行時搭乗は避ける必要があります。
Q. 上部操作と下部操作、どちらが優先されますか
条文はどちらを優先するかを定めるのではなく、両者の間で連絡を確実にするための合図を義務づけています。現場では、操作権が今どちらにあるかを明確にしておく運用が必要です。
Q. 高所作業車の資格は高さによって変わりますか
作業床の高さに応じて、技能講習または特別教育のいずれが必要かが変わります。個別の判断は、所轄の労働基準監督署または講習実施機関にご確認ください。