埋設物を損傷する事故とは、掘削や杭打ちの作業中に、地中に埋設されたガス管・電線・水道管等を機械や工具で傷つけ、切断してしまう事故をいいます。ガス漏れによる爆発・火災や、電線損傷による感電など、周辺住民を含めた重大災害に直結するため、他の掘削作業と比べても慎重な対応が求められます。この記事では、埋設物の損傷がなぜ重大災害になるのか、試掘と立会いという対策を中心に整理します。
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埋設物の損傷はなぜ重大災害になるか
埋設物の損傷が重大災害になりやすい理由は、被害が作業員本人だけにとどまらないことにあります。ガス管を損傷すれば周辺にガスが拡散し、火気があれば爆発・火災につながります。電線を損傷すれば感電のほか、周辺一帯の停電を引き起こすこともあります。水道管であれば、周辺への断水や道路の陥没につながる場合もあります。
建設業における「感電」「爆発」「破裂」による死傷者数は、令和7年の確定値でそれぞれ43人、11人、13人となっています(出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定)」)。この数値のすべてが埋設物の損傷を原因とするものではありませんが、埋設物の損傷はガス漏れによる爆発・火災や、電線切断による感電の原因となりうる作業として位置づけられています。
図面と現物がずれる理由
埋設物の位置は、あらかじめ管理者から提供された図面をもとに把握しますが、図面と実際の埋設位置がずれていることは珍しくありません。過去の改修工事で移設された埋設物が図面に反映されていない、埋設からの年数が経ち図面自体が古い、複数の管理者の埋設物が輻輳していて図面上の縮尺では正確な位置が分からないといった事情が重なります。
図面をそのまま信じて掘削位置を決めることは、この「ずれ」を前提にしていない判断です。図面はあくまで手掛かりであり、実際の位置は現地で確認するという前提に立つ必要があります。
試掘の考え方
試掘とは、機械による掘削の前に、人力あるいは慎重な操作で埋設物の有無と正確な位置を確認するために行う小規模な掘削をいいます。労働安全衛生規則第百九十四条は、くい打機又はボーリングマシンを使用して作業を行う場合において、ガス導管、地中電線路その他地下に存する工作物の損壊により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、あらかじめ、作業箇所についてガス導管等の有無及び状態を管理する者に確かめる等の方法により調査し、これらの事項について知り得たところに適応する措置を講じなければならないと定めています(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。
試掘は、機械掘削で一気に埋設物の深さまで到達する前に、手掘りで慎重に土を除きながら埋設物の位置を目視で確認する作業です。時間がかかる作業ではありますが、この工程を省略して機械掘削を先行させることが、損傷事故につながる最も直接的な原因になります。
管理者への照会と立会い
労働安全衛生規則第三百六十二条は、埋設物等又はれんが壁、コンクリートブロック塀、擁壁等の建設物に近接する箇所で明り掘削の作業を行う場合において、これらの損壊等により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、補強し、移設する等当該危険を防止するための措置が講じられた後でなければ、作業を行ってはならないと定めています。露出したガス導管の損壊のおそれがある場合は、つり防護・受け防護等による防護、又は移設等の措置を講じること、この防護作業には指揮者を指名し、その者の直接の指揮のもとに行わせることも定めています(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。
掘削の前に管理者へ照会し、必要であれば立会いを依頼することは、図面のずれを現地で補うための実務上の手続きです。管理者の立会いを得られれば、図面には現れない過去の移設履歴や、現地でしか分からない目印について確認できることがあります。照会や立会いの依頼には時間がかかりますが、この手続きを省略した分だけ、損傷のリスクは現場の判断だけに委ねられることになります。
機械掘削と手掘りの境目
試掘によって埋設物のおおよその位置が判明したあとも、埋設物のごく近くまでは手掘りで慎重に進め、そこから離れた範囲でのみ機械掘削に切り替えるという境目を決めておく必要があります。この境目をどこに置くかは、埋設物の種類・深さ・図面の精度によって変わります。
境目を決めずに、作業を急ぐあまり機械掘削の範囲を埋設物の近くまで広げてしまうことが、事故につながる典型的な判断です。試掘で得られた情報をもとに、その日の作業で機械掘削をどこまで許すかを、作業開始前に具体的に決めておく必要があります。
損傷したときの初動
万一埋設物を損傷してしまった場合、初動の対応がその後の被害の大きさを左右します。ガス管の損傷であれば、火気の使用を直ちに中止し、周辺の人を避難させ、ガス管理者へ連絡することが優先されます。電線の損傷であれば、感電の危険がある間は近づかず、電力会社への連絡を優先します。作業を続けながら状況を確認しようとする判断は、二次被害を広げる危険があります。
損傷に気づいた瞬間に何をすべきかを、作業員一人ひとりが事前に把握しているかどうかが、初動の速さを左右します。
記録と報告
試掘の結果、管理者への照会内容、立会いの記録は、その後の工事や近隣工事での参考資料になります。埋設物の実際の位置が図面と異なっていた場合、その情報を記録に残しておくことで、次に同じ場所で工事を行う際の図面のずれを減らすことにもつながります。
損傷が実際に発生した場合は、労働者死傷病報告等の対象になることがあります。関連する報告の要否については、所轄の労働基準監督署にご確認ください。
土止め支保工については土止め支保工にまとめている。毎日のKY活動をどう記録に変えるかは、毎日のKY活動を記録に変えるを参照してほしい。
本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、社会保険労務士等の専門家、または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。
まとめ
- 埋設物の損傷は、ガス漏れによる爆発・火災や電線切断による感電など、周辺一帯を巻き込む重大災害につながります
- 労働安全衛生規則第百九十四条は、くい打機・ボーリングマシン使用時に埋設物の有無を管理者に確かめる調査を義務づけています
- 第三百六十二条は、埋設物に近接する明り掘削で、補強・移設等の措置が講じられるまで作業を行わないことを定めています
- 試掘で埋設物のおおよその位置を確認したうえで、機械掘削と手掘りの境目を作業開始前に決めておく必要があります
- 損傷時は作業を継続せず、火気の中止・退避・管理者への連絡という初動を優先します
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よくある質問
Q. 図面に埋設物の記載がなければ試掘は不要ですか
図面に記載がなくても、周辺の状況から埋設物の存在が疑われる場合は、管理者への照会や試掘によって確認する必要があります。個別の判断は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
Q. 試掘にはどのくらいの範囲・深さが必要ですか
埋設物の種類や深さ、図面の精度によって必要な範囲は異なります。管理者への照会結果を踏まえて、現場ごとに判断する必要があります。
Q. 埋設物を損傷してしまった場合、作業を止めるべきですか
ガス管や電線の損傷が疑われる場合は、火気の使用を中止し、周辺の人を退避させたうえで、管理者・関係機関へ速やかに連絡する必要があります。作業を継続しながら状況を確認することは避けてください。