衛生管理者の免許を持つ社員がいても、実際にどこまでの規模で選任義務が生じるのか、巡視の記録に何を書けばよいのか、免許を取らせただけで運用が止まっている会社は少なくない。
本稿では、衛生管理者の選任が必要な事業場の規模、免許の種類、週1回の巡視義務と記録の書き方を整理する。
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衛生管理者とは
衛生管理者とは、事業場における衛生に係る技術的事項を管理する担当者をいう。安衛法第12条は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者、または厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから衛生管理者を選任し、衛生に関する技術的事項を管理させることを事業者に求めている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。
安全管理者が対象業種を限定した制度であるのに対し、衛生管理者は業種を問わず、規模の要件だけで選任義務が生じる点が特徴である。安全管理者との対象範囲の違いは、安全管理者の選任は50人からであわせて確認できる。
免許の種類と選べる業種
衛生管理者の免許には、第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許などの区分がある。第二種免許は有害業務が比較的少ない業種に限って選任でき、建設業のように有害業務を伴う業種では第一種免許を持つ者を選任する必要がある。
有害業務を相当程度行う一定規模以上の事業場では、衛生工学衛生管理者の資格を持つ者を選任することが求められる場合もある。免許の種類を取り違えて第二種の資格者を建設業の事業場に選任してしまうと、選任要件を満たしていないことになるため、業種と免許の対応関係は選任前に必ず確認する必要がある。
医師や歯科医師、労働衛生コンサルタントの資格を持つ者も、一定の条件のもとで衛生管理者として選任できる。ただし建設現場の実務では、免許試験を受けて第一種衛生管理者免許を取得したうえで選任される例が大半を占める。免許取得後も、法改正や新しい有害業務の知見を踏まえた自己研鑽が求められる点は変わらない。
事業場の規模と必要人数
衛生管理者の選任義務が生じるのは、業種を問わず常時50人以上の労働者を使用する事業場である(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生法施行令)。さらに事業場の規模が大きくなるにつれて、選任すべき衛生管理者の人数も増える構成になっている。
おおむね、50人以上200人以下の事業場では1人、201人以上500人以下では2人、それ以上の規模ではさらに人数が増える段階的な構成である。労働者数が節目を超えたときに人数の見直しを忘れると、実際には選任すべき人数を満たしていない状態になりかねない。
事業場の労働者数は、正社員だけでなく、常態として使用しているパート・アルバイトなども含めて数える。繁忙期だけ増える臨時の応援者を除いた、恒常的な使用人数で判断するのが基本的な考え方である。人数の増減が激しい事業場では、四半期ごとなど定期的な棚卸しのタイミングを決めておくと、選任人数の過不足に気づきやすくなる。
週1回の巡視という義務
衛生管理者には、少なくとも毎週1回、作業場等を巡視することが安衛則で義務づけられている。巡視では、設備、作業方法、衛生状態に有害のおそれがないかを確認し、問題があれば直ちに必要な措置を講じることが求められる。
「毎週1回」という頻度が明文で定められている点は、頻度を明示しない安全管理者の巡視義務との大きな違いである。この違いを理解していないと、安全管理者と衛生管理者の職務を混同し、どちらか一方の巡視だけで済ませてしまう運用になりかねない。両方の巡視を同じ日にまとめて行う運用も可能だが、その場合も記録は別々に残し、それぞれの職務として実施したことが分かるようにしておく必要がある。
巡視記録の書き方
巡視を行ったら、巡視した年月日、確認した場所、確認した内容、発見した問題点、講じた措置を記録に残す。「異常なし」とだけ書いて済ませる記録は、実際に何を確認したのかが後から分からず、巡視を形式的に行っただけと受け取られかねない。
記録の様式は法令で定められた統一の書式があるわけではないが、毎週の記録を同じ様式で積み重ねることで、時系列での変化を追いやすくなる。前週に指摘した事項が改善されているかを確認する欄を設けておくと、指摘のしっぱなしを防ぎやすい。
記録を紙で管理していると、複数の事業場・現場を巡回する衛生管理者ほど、記入のタイミングが後回しになりやすい。巡視した当日のうちに記録を残す習慣を徹底しないと、記憶が薄れた状態で後日まとめて書くことになり、記録としての精度が下がってしまう。週をまたいで記入が滞ると、そもそも巡視を行ったかどうかの立証自体が難しくなる点にも注意したい。
産業医との役割分担
衛生管理者と産業医は、いずれも事業場の衛生管理に関わる立場だが、役割は異なる。衛生管理者は日常的な巡視と技術的事項の管理を担う立場であり、産業医は医学的な専門知見にもとづいて意見を述べる立場である。
衛生管理者が現場の巡視で気づいた問題を産業医に相談し、産業医が医学的な観点から助言する、という連携が実務では機能しやすい。両者の情報共有が滞ると、現場で見つかった問題が医学的な判断につながらないまま放置される事態にもなりかねない。産業医の職務と選任基準は、産業医は50人からで整理している。
建設現場での実務
建設業の事業場では、本社や支店の事業場単位で衛生管理者の選任義務が生じるが、実際の作業は個々の建設現場で行われるため、衛生管理者が現場の実態をどこまで把握できるかが課題になりやすい。
事業場に所属する衛生管理者が、担当する複数の現場を巡回して衛生状態を確認する運用にする場合、巡視の頻度が現場ごとにばらつかないよう、あらかじめ巡回計画を立てておく必要がある。夏場の熱中症対策や冬場の防寒対策など、季節によって確認すべき衛生上のポイントが変わることも、巡回計画に反映しておきたい。日々の教育記録を積み上げる基本的な考え方は、毎日のKY活動を記録に変えるで整理している。
事業場と現場の選任をまとめた早見表をPDFで用意している。 登録は要らない。安全衛生管理体制の早見表(PDF) からそのまま落とせる。
本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、社会保険労務士等の専門家、または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。
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よくある質問
Q. 建設業では第二種衛生管理者免許では選任できませんか
建設業は有害業務を伴う業種にあたるため、第二種免許では選任要件を満たさない。第一種衛生管理者免許を持つ者、または同等の資格を持つ者を選任する必要がある。
Q. 週1回の巡視を欠かした週があった場合はどうなりますか
巡視は少なくとも毎週1回行うことが求められているため、欠かした場合は義務を満たしていないことになる。出張や体調不良などで巡視できない事情がある場合は、代理の衛生管理者を選任するなどの対応をあらかじめ検討しておく必要がある。
Q. 衛生管理者を複数選任した場合、職務は分担できますか
複数の衛生管理者を選任した事業場では、担当する部門や巡視範囲を分けて職務を分担する運用が一般的である。ただし、それぞれの担当範囲について巡視義務が果たされているかは、個別に確認する必要がある。担当が曖昧なまま複数人を選任すると、誰も巡視していない領域が生まれる恐れもある。