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安全衛生責任者は下請が置く|選任と連絡調整の実務を整理する

約6分で読めます 安全ドリル+編集部
安全衛生責任者職長選任建設業下請
型枠の現場で起きる転倒の場面(安全ドリル+の教材より)
型枠 転倒 安全ドリル+の教材より

安全衛生責任者を選任すべき事業者と、連絡調整という職務の中身を、職長との違いとあわせて安衛法の条文にもとづいて整理する。

「安全衛生責任者と職長って何が違うんですか」——現場でこう聞かれて、うまく説明できずに詰まった経験のある担当者は少なくない。同じ人が両方を兼ねていることが多いために、余計に区別が曖昧になりやすい。

本稿では、安全衛生責任者を選任すべき事業者、職長との違い、連絡調整という職務の中身を整理する。

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安全衛生責任者とは

安全衛生責任者とは、統括安全衛生責任者が選任される現場において作業を行う下請(関係請負人)が選任し、統括安全衛生責任者との連絡・調整を担う担当者をいう。安衛法第16条は、統括安全衛生責任者の選任を要する現場で作業を行う請負人に対し、安全衛生責任者を選任することを求めている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。

統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者は元請側の役職だが、安全衛生責任者は下請側が選任する役職である。元請と下請の間に立つ連絡窓口という位置づけを理解すると、他の役職との違いが整理しやすくなる。役職どうしの関係全体は、統括安全衛生責任者は誰が選任するかであわせて確認できる。

誰が選任するのか(下請側の義務)

安全衛生責任者の選任義務を負うのは、統括安全衛生責任者の選任を要する現場で作業を行う、元請以外の全ての事業者である。一次下請だけでなく、二次下請・三次下請であっても、その現場で作業を行う限り、自社の労働者を指揮する立場の者を安全衛生責任者として選任しなければならない。

現場に入る下請の数が多いほど、安全衛生責任者の数も増える。元請の統括安全衛生責任者は、これら複数の安全衛生責任者と個別に連絡調整を行う立場になるため、下請の数が多い現場ほど、この連絡調整の仕組みが機能しているかどうかが安全管理の質を左右する。二次下請・三次下請まで含めると、元請が直接顔を合わせる機会のない安全衛生責任者が生まれることもあり、一次下請を経由した情報伝達の精度が問われる場面も出てくる。

職長との違い

職長とは、作業中の労働者を直接指揮監督する現場の第一線監督者をいう。安衛法第60条は、一定の業種において新たに職長になる者に対し、安全衛生教育を行うことを事業者に求めている。職長の教育の詳しい内容は、職長教育の再教育は5年ごとで扱っている。

職長と安全衛生責任者は、法令上はまったく別の役職である。職長は自社内で作業員を指揮する立場、安全衛生責任者は元請の統括安全衛生責任者と連絡調整を行う立場であり、対象とする関係が異なる。ただし実務上は、現場に常駐する下請の代表者が両方を兼ねる例が多く、この兼任が両者を混同させる一因になっている。

法令上、職長と安全衛生責任者の兼任を禁じる規定はない。小規模な下請では、作業員を直接指揮しながら元請との連絡調整も担うほうが現実的な体制になりやすい。ただし兼任する場合でも、それぞれの職務が果たされているかどうかは別々に確認する必要がある。

連絡調整という職務の中身

安全衛生責任者の職務として安衛則が定めるのは、統括安全衛生責任者との連絡、統括安全衛生責任者から連絡を受けた事項の関係者への伝達、他の請負人との作業間の連絡調整への対応、当該請負人が作成する作業計画と元請の作業計画との整合の確認などである。

連絡調整というと会議への出席だけを思い浮かべがちだが、実際には日々の作業計画の中身をすり合わせる継続的な行為が中心になる。統括安全衛生責任者からの連絡事項を、自社の作業員全員に確実に伝達できているかどうかが、この職務の実効性を左右する。

統括との情報の流れ

情報の流れとしては、統括安全衛生責任者が現場全体の状況をまとめ、各下請の安全衛生責任者に伝達し、安全衛生責任者がそれを自社の作業員に伝える、という一方向の流れに加え、各下請の現場の状況を安全衛生責任者が統括安全衛生責任者に報告するという逆方向の流れも存在する。

この双方向の流れが片方向だけになると、元請は現場の実態を把握できず、下請は元請の判断根拠が見えないという断絶が生じる。協議組織(安全衛生協議会)は、この双方向の情報共有を定期的に行う場としても機能する。協議組織の運営方法は、安全衛生協議会の議事録は何を残すかで扱っている。

会議の場だけに情報共有を頼ると、会議と会議の間に生じた変化——工程の前倒しや作業員の急な入れ替わりなど——が伝わらないまま次の会議まで放置されることがある。安全衛生責任者どうしが日常的に無線や現場での立ち話で情報を交換できる関係を築いておくと、会議はその内容を確認・共有する場として機能しやすくなる。

教育の要否

安全衛生責任者そのものについて、選任前の受講を法令が義務づける教育は明文で定められていない。ただし、労働災害防止団体等が実施する安全衛生責任者教育(講習)を受講したうえで選任する運用が、建設業では広く定着している。

職長との兼任者であれば、職長教育をあわせて受けていることが多いが、職長教育と安全衛生責任者教育は対象とする内容が異なるため、双方の教育を受けているかどうかを個別に確認しておく必要がある。片方の受講歴だけをもって両方の役割を果たせると判断してしまう誤りは、実務で意外に起きやすい。

現場での運用

安全衛生責任者を選任したら、氏名を元請に届け出て、現場の体制表や掲示物に反映する運用が一般的である。人が交代した場合も速やかに元請へ連絡し、統括安全衛生責任者側の連絡先リストを更新する必要がある。

下請の数が多い現場では、誰がどの安全衛生責任者に連絡すればよいかが分かりにくくなりがちである。体制図に安全衛生責任者の氏名と連絡先を明記し、常に最新の状態に保つことが、連絡調整を機能させる前提になる。新規入場する下請が増える工程の節目ほど、体制図の更新が後回しになりやすい点にも注意したい。体制図の作り方は、安全衛生管理体制を1枚の図にするで整理している。日々の教育記録を積み上げる基本的な考え方は、毎日のKY活動を記録に変えるを参照してほしい。

元請と下請のどちらが何を選任するかをまとめた早見表をPDFで用意している。 登録は要らない。安全衛生管理体制の早見表(PDF) からそのまま落とせる。

本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、社会保険労務士等の専門家、または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。


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よくある質問

Q. 一人親方は安全衛生責任者を選任する必要がありますか

安全衛生責任者は請負人が自社の労働者を対象に選任するものであり、労働者を使用しない一人親方には選任義務が生じないのが原則である。ただし現場全体の連絡調整の対象としてどう扱うかは、元請との取り決めによる部分もある。

Q. 職長と安全衛生責任者を兼任させても問題はありませんか

法令上、兼任を禁じる規定はない。小規模な下請では兼任が現実的な運用になりやすいが、兼任する場合でも、それぞれの職務が果たされているかを別々に確認しておく必要がある。

Q. 安全衛生責任者を選任しなかった場合はどうなりますか

選任義務のある下請が安全衛生責任者を選任しない場合、安衛法に基づく罰則の対象となり得る。元請との連絡調整が機能しなくなることで、混在作業のリスクが見落とされやすくなる点にも注意が必要である。着工前の下請契約の段階から、選任の要否と担当者をあらかじめ確認しておくことが望ましい。事後に慌てて選任するのではなく、契約時点で織り込んでおく方が体制は安定する。

安全衛生責任者職長選任建設業下請安全管理体制