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元方安全衛生管理者の資格と職務|統括責任者との違いを整理する

約6分で読めます 安全ドリル+編集部
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共通の現場で起きる転倒の場面(安全ドリル+の教材より)
安全ドリル+の教材より

元方安全衛生管理者の資格要件と職務内容を、統括安全衛生責任者との役割の違いとあわせて、安衛法と安衛則の条文にもとづいて整理する。

統括安全衛生責任者を選任した現場では、もう1つ別の役職の選任が必要になる場合がある。元方安全衛生管理者である。名前が似ているうえに職務も重なって見えるため、両者の違いを正確に説明できる担当者は意外に少ない。

本稿では、元方安全衛生管理者の資格要件と職務を、統括安全衛生責任者との違いを軸に整理する。

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元方安全衛生管理者とは

元方安全衛生管理者とは、建設業の現場において、統括安全衛生責任者の指揮のもと、安衛法第30条第1項各号の措置のうち技術的な事項を管理する専任の担当者をいう。安衛法第15条の2は、統括安全衛生責任者の選任を要する建設業の現場において、この者を選任することを事業者に求めている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。

対象になる規模は、統括安全衛生責任者と同じく施行令が定める人数(原則として現場に入る労働者数が50人以上、トンネル工事等は30人以上)である。ただし元方安全衛生管理者は建設業のみを対象とし、造船業には適用されない点が統括安全衛生責任者と異なる。

統括安全衛生責任者との違い

統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者の関係を、統括安全衛生責任者は誰が選任するかと合わせて整理すると、次のようになる。

項目統括安全衛生責任者元方安全衛生管理者
立場現場全体を統括管理する責任者統括の指揮を受け技術的事項を管理する専任者
典型的な就任者現場所長など統括管理の権限を持つ者施工管理の実務経験を積んだ専門職
資格要件明文の学歴・実務経験要件はない学歴と実務経験年数を組み合わせた要件がある
対象業種建設業・造船業建設業のみ

統括安全衛生責任者が「誰に何をやらせるかを決める立場」だとすれば、元方安全衛生管理者は「決められたことを技術的に実行する立場」に近い。両者の職務が重なって見えるのは、後者が前者の指揮下で動く構造になっているためである。

資格要件(学歴と実務年数)

元方安全衛生管理者には、安衛則が学歴と建設工事の安全衛生実務経験年数を組み合わせた要件を定めている。おおむね、大学や高等専門学校で理科系の課程を修めて卒業した者は実務経験3年以上、高等学校で理科系の課程を修めて卒業した者は実務経験5年以上、それ以外の学歴の者はより長期の実務経験が求められる構成になっている。

この要件は、施工の技術的な内容を理解したうえで安全衛生管理を担えるかどうかを担保する趣旨と考えられる。人選の際は、資格の有無を証明できる卒業証明や職歴の記録を、選任の根拠として残しておく必要がある。

実務経験の年数をどこから起算するかも、判断に迷いやすい点である。建設工事の施工に関わる部署での経験であれば、必ずしも安全衛生の専任担当としての経験に限られないと解されているが、経験の内容が要件に合致するかどうか不明な場合は、選任前に所轄の労働基準監督署へ確認しておくと後の指摘を避けやすい。

専属であること

元方安全衛生管理者は、その事業場に専属であることが求められる。専属とは、他の事業場と兼務せず、その現場の職務にもっぱら従事する状態をいう。

同じ現場の中で施工管理など他の職務と兼任すること自体は禁じられていないが、他の現場と掛け持ちする形での選任は専属の要件に反する。複数現場を担当する技術者を元方安全衛生管理者として選任する場合は、専属の要件を満たせているかを個別に確認する必要がある。

現場が小規模化・工期短縮化する傾向のなか、専属の担当者を1現場ごとに用意する体制は、会社全体の技術者数によっては負担になりやすい。工期の終盤に人員が絞られる時期でも、専属という要件は変わらないため、体制計画の段階で無理のない人員配置を組んでおく必要がある。

職務の範囲

元方安全衛生管理者の職務は、安衛法第30条第1項各号のうち技術的事項——協議組織の運営に関わる技術的な調整、作業間の連絡調整、作業場所の巡視、下請への教育の指導・援助、工程・機械配置計画の技術的な内容——を、統括安全衛生責任者の指揮のもとで実務として担うことである。

巡視は現場を実際に歩いて確認する行為であり、協議組織で決まった事項が現場でどう実行されているかを技術的な視点で見る役割も含まれる。統括安全衛生責任者が意思決定を担い、元方安全衛生管理者がその実行を技術面から支える、という分担で運用している現場が多い。

兼任はどこまで許されるか

元方安全衛生管理者は専属が要件であるため、他の事業場との兼任は認められない。一方、同一現場内での他職務との兼任は妨げられない。ただし、施工管理業務が多忙な時期に元方安全衛生管理者の職務がおろそかにならないよう、実際にどの程度の時間を安全衛生管理に割けるかを、選任時点で見込んでおくことが望ましい。

統括安全衛生責任者との兼任については、明文で禁止する規定はないが、指揮する側とされる側を同一人物が兼ねることは職務の趣旨に反するため、現場では別人を充てるのが一般的な運用になっている。人員に余裕がない現場ほど、この分離を後回しにしがちである点に注意したい。

記録に残すこと

元方安全衛生管理者を選任したときは、氏名と資格の根拠を記録に残し、現場に掲示するなどして周知する運用が一般的である。人が交代した場合も同様の手続きが必要になる。

巡視の記録は、いつ・どこを・何の観点で確認したかが分かる形で残す。安全衛生協議会の議事録と巡視記録を突き合わせることで、決定事項が現場でどう実行されたかを後から追跡できる状態にしておくと、労働基準監督署の臨検にも対応しやすい。

記録の作成を元方安全衛生管理者1人の手作業に任せきりにすると、多忙な時期ほど記入が滞りやすい。巡視の記録と、下請各社が行う日々の安全衛生教育の記録は本来別の性質のものだが、両方が積み上がって初めて現場の実態が見える。教育記録の側は下請ごとに記名で残す仕組みを整え、元方安全衛生管理者は巡視と協議組織の記録に集中できる体制にしておくと、双方の負担が偏りにくい。日々のKY活動を記録として積み上げる基本的な考え方は、毎日のKY活動を記録に変えるで整理している。

9つの役職の選任規模と根拠条文を1枚にまとめた早見表をPDFで用意している。 登録は要らない。安全衛生管理体制の早見表(PDF) からそのまま落とせる。

本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、社会保険労務士等の専門家、または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。


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よくある質問

Q. 元方安全衛生管理者は必ず統括安全衛生責任者とは別の人にする必要がありますか

法令上、兼任を明文で禁止する規定はないが、指揮する側とされる側を同一人物が兼ねることは職務の趣旨になじまないため、実務では別人を選任するのが一般的である。

Q. 資格要件を満たす人材が社内にいない場合はどうすればよいですか

学歴・実務経験の要件を満たす人材を社外から確保するか、資格要件を満たす見込みの社員に必要な実務経験を積ませる計画を立てる必要がある。選任義務のある現場に着工前から準備しておくことが望ましい。人材の育成には数年単位の時間がかかるため、直前になって慌てないよう、中長期の要員計画に組み込んでおく必要がある。

Q. 元方安全衛生管理者の選任を怠るとどうなりますか

選任義務のある規模の現場で選任を怠った場合、安衛法に基づく罰則の対象となり得る。労働災害が発生した際には体制の不備として調査で厳しく確認される点でもあるため、着工前の段階で選任の要否を必ず確認しておく必要がある。

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