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型枠パネルの建て起こしで指を挟む事故|手の置き場所の決め方

約7分で読めます 安全ドリル+編集部
型枠パネル建て起こし挟まれ災害型枠支保工建設業 労働災害
電気の現場で起きる挟まれの場面(安全ドリル+の教材より)
電気 挟まれ 安全ドリル+の教材より

型枠パネルの建て起こしで足や指を挟む事故を防ぐため、手を置く位置と一人で扱わない大きさの目安を整理しました。

型枠パネルを寝かせた状態から垂直に立てる「建て起こし」は、型枠工事のほぼ毎日に発生する作業です。厚生労働省が公表した令和7年の労働災害発生状況(確定値)によると、建設業における「はさまれ・巻き込まれ」による休業4日以上の死傷者数は1,496人、「動作の反動・無理な動作」による死傷者数は915人に上ります(出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定)」)。この記事では、建て起こし作業で指や足を挟む事故を、手の置き場所と人数の判断から防ぐ方法を整理します。

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建て起こしはなぜ危ないか(重さ+回転)

建て起こしが危ないのは、パネルの重さと回転する動きが同時に働くためです。パネルを傾けて立てる途中、下端は床の一点を軸に回転します。この軸の真下に足を置いていると、体重の何倍もの力が一瞬でかかります。

実際の作業では、パネルの下端が作業者のつま先に乗り、ブーツのつま先がすでにへこみ始めている場面が見られます。パネルは重く、押している最中は止められません。足を置く位置は、起こし始める前に決めておく必要があります。

手を置いてよい場所・いけない場所

パネルを支えるときに手を置いてよいのは縁だけです。パネルの下に手を差し入れて支えようとすると、パネルの重さが逃げ道をふさぎ、指が抜けなくなります。

前回のコンクリートが表面にこびり付いたパネルは、手袋越しでも滑りやすくなっています。縁を握ったつもりでも、力を入れた瞬間に手が滑って持ち直そうとすると、その一瞬に指の位置が変わり、挟まれる隙間へ入り込むことがあります。付着物が多いパネルは、使う前にケレンで落としておくと、握りの安定にもつながります。

パネルを反転させる作業は、建て起こしの前段階として日常的に発生します。反転させる側に別の資材が置かれていると、返している途中でパネルが引っかかって止まり、止まった板がそのまま人に向かって倒れてくることがあります。返す向きの先を先に空けておくことが、反転作業そのものの前提になります。

一人でパネルを反転させる場面では、体をそらせて重さを支えようとする姿勢が見られます。体をそらせると、力は腰に集まります。パネルは体の正面で立てるのが基本で、傾き始めたら手を離して体を引く判断が必要です。

揚重中のパネルでも同じ問題が起きます。つり上げたパネルと壁の間の隙間に、薄い手袋のまま指を入れて押さえようとする場面があります。荷は振れるものであり、手で押さえて止めることはできません。誘導ロープと当て木を使い、手をすき間の外から操作する工夫が必要です。

一人でやらない大きさの目安

大きなパネルを一人で反転させることは、人数ではなく大きさで判断する問題です。人数を増やせばパネルの重さが変わるわけではありませんが、大きさが一定を超えると、一人の手では扱いきれない回転の力が生まれます。

決められた大きさを超えるパネルは、機械で吊って起こすか、二人以上で両端を持って起こします。一人で縁を順に送って起こす方法や、台の端に掛けて回す方法は、途中で制御を失いやすいため避けるべきです。

大きさの目安を、現場ごとに次のように分けて共有しておくと判断がぶれにくくなります。

パネルの大きさの目安扱い方注意点
一人で縁を持ち上げられる小型一人で建て起こしてよい下端の位置と足元を先に確認する
両手で抱える中型二人以上で両端を持って起こす合図をそろえ、途中で止める合図も決める
一人の手に余る大型機械で吊って起こす人を下に立たせず、誘導ロープで向きを操作する

パネルを置く作業台の高さが低いと、腰を折る回数が増え、無理な姿勢のまま起こし始める場面が生まれやすくなります。台の高さは、扱う人の腰の位置に合わせて調整することが、建て起こしそのものの安全性にも関わってきます。

合図とタイミングの決め方

二人で建て起こしをするとき、まず決めるべきは力を合わせる合図です。声を掛け合わずに別々の速さで押していると、力が片方に寄り、パネルが斜めに傾きます。

足元に散らばった番線の切れ端も、合図と同じくらい起こす前に確認すべき対象です。踏ん張ろうとした瞬間に切れ端で足を滑らせると、体が引かれてパネルから離れる方向に力が逃げ、もう一方の作業者だけがパネルを支える状態になります。起こす前の周囲確認は、合図の打ち合わせとセットで行う一手間です。

「せーの」で合わせるだけでなく、途中で止める合図も決めておくことが必要です。起こしている最中に異常を感じても、止める合図が決まっていなければ、片方だけが動きを止めてもう片方が押し続けるという事態が起こります。

倒れ始めたら手を離す

起こしたパネルを支える控えが用意されていないと、手を離した瞬間にパネルが倒れてきます。立てただけのパネルは自分では立ちません。控えを先に用意し、立てたらすぐに留めるという順番を守る必要があります。

控えを付ける作業自体にも順番があります。パネルが垂直に近づいた段階で、先に控えを持つ人が定位置に着き、パネルを押している人の合図を待ってから差し込みます。控えを持つ人が遅れて動き出すと、押している人はパネルを支えたまま待つことになり、無理な姿勢が長く続く原因になります。控えの準備は、起こし始める前に済ませておくのが確実です。

同じ「建て起こし」でも、揚重機でつり上げてから起こす場合は別の危険が加わります。つり荷が振れている状態で壁との隙間に手を入れて押さえようとすると、荷が振れた瞬間に指を挟みます。押さえるのではなく、誘導ロープと当て木を使い、手をすき間の外側から操作することが必要です。合図者もクレーンの運転者から常に見える位置に立ち、荷の陰に隠れないようにします。

建て起こしは、パネルの大きさが揃っていない現場ほど判断が難しくなります。同じ日の作業でも、小さいパネルと大きいパネルが混在していると、「さっきは一人でできたから今回も」という思い込みが生まれやすくなります。パネルごとに大きさを確認し、その都度必要な人数を判断する習慣が欠かせません。

労働安全衛生規則第247条は、型枠支保工の組立て等作業主任者の職務として、作業の方法を決定し作業を直接指揮すること、材料の欠点の有無や器具・工具を点検し不良品を取り除くこと、作業中の墜落制止用器具や保護帽の使用状況を監視することを定めています(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。パネルの建て起こしも、こうした作業主任者による方法の決定と指揮のもとで行うことが前提になります。

KYでの確認方法

足元に番線の切れ端が散らばっていると、起こす際に踏ん張れず、体が引かれる原因になります。起こす前に、下端が来る線から足をどける、足元の散乱物を片づけるという2点は、毎回のKYで確認できる項目です。

建て起こしを繰り返す型枠工事の現場では、同じ危険な動作が日々の作業の中に紛れ込みやすいという特徴があります。毎日見ている作業ほど、危険と感じにくくなるためです。KYの場で「今日は何枚起こすか」「一人で扱える大きさを超えるものはあるか」を具体的に問いかけることが、抽象的な「気をつけましょう」よりも実際の行動につながります。

短い動画で「つま先に下端が乗る」場面や「体をそらせて一人で支える」場面を見せる方法は、抽象的な注意喚起よりも記憶に残ります。安全ドリル+のような教材は、当日選んだ工種に合わせて1本目の映像を選び、残り4本はランダムに表示する設計です。型枠工事の日には、建て起こしの場面が題材として選ばれやすくなります。

毎日のKY活動をどう記録に変えるかは、毎日のKY活動を記録に変えるを参照してほしい。

本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、社会保険労務士等の専門家、または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。

まとめ


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よくある質問

Q. パネルを何人で起こすかは、誰が決めますか

現場ごとに定めた作業手順や、型枠支保工の組立て等作業主任者の指示に従うのが基本です。パネルの大きさ・重さの目安をあらかじめ現場で共有しておくと判断がぶれません。

Q. 一人で反転させてよいパネルの大きさに、法令上の数値基準はありますか

労働安全衛生規則に一律の数値基準は定められていません。現場ごとにパネルの重さや大きさの目安を決め、周知しておくことが実務上の対応になります。

Q. 控えを付ける前にパネルから手を離してしまった場合、どうすればよいですか

パネルが傾き始めたら、無理に支えようとせず体を引いて距離を取ることが優先されます。控えを先に用意してから起こすという順番を徹底することが、そもそもの対策です。

Q. 揚重中のパネルと壁の隙間を、手を使わずに寄せる方法はありますか

誘導ロープと当て木を使い、手をすき間の外側から操作する方法が有効です。合図者を運転者から見える位置に置くことも欠かせません。

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