資材倉庫や仮設ヤードでは、フォークリフトと歩行者が同じ通路を歩いていることが珍しくありません。厚生労働省が公表した令和7年の労働災害発生状況(確定値)によると、建設業における「はさまれ・巻き込まれ」による休業4日以上の死傷者数は1,496人に上ります(全産業では13,047人。出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定)」)。この記事では、フォークリフトと歩行者の動線を分ける考え方を、実際に起きやすい場面から整理します。
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誘導員のいない重機作業エリアへの立ち入り
テープや コーンで 区域を 囲まないと、人が 重機の 動く 範囲に 気づかず 入って しまう。作業を 始める 前に、必ず 区域を 囲む。
場内災害の多くは「同じ道」で起きる
場内交通災害の多くは、フォークリフトと歩行者が同じ通路を共有していることから起きます。通路の床に黄色いラインが1本引かれているだけで、そのラインを車両のタイヤ跡と人の足跡が同じように踏んでいる現場は少なくありません。
書類に目を落としながら歩く作業員がいます。その先では、荷を高く上げたフォークリフトが旋回しようとしています。旋回中の車体は、後部が外側へ大きく振り出されます。歩行者用の通路が別に用意されていなければ、この振り出しの範囲に人が入り込みます。
こうした場面は、フォークリフトと歩行者のどちらか一方に注意を呼びかけるだけでは解決しません。運転者に「歩行者に気をつけて」と伝え、歩行者に「車両に気をつけて」と伝えても、双方が同じ通路を同じ時間に使い続ける限り、リスクは残り続けます。
歩行者が車両の存在に気づくのが遅れる理由は単純です。荷を高く上げたまま走行すると、運転者の前方視界が荷にふさがれます。前が見えない状態で走る車両と、下を向いて歩く歩行者が近づけば、双方とも相手に気づかないまま距離が縮まります。
動線を図で分ける(線・柵・時間)
動線を分けるとは、車両と歩行者が同じ空間を同じ時間に使わないようにする取り組みです。方法は大きく3つあります。
- 線で分ける 通路の床に、歩行者用と車両用のレーンを別の色で塗り分けます。同じ黄色1本ではなく、色や幅を変えて視覚的に区別します。
- 柵で分ける 資材置き場と通路の境目に柵やパイロンを設置し、歩行者が車両通路へ誤って踏み込まない構造にします。
- 時間で分ける 荷の搬入時間帯だけ歩行者の通行を制限するなど、同時に使う時間そのものを減らします。
線だけでは、急いでいるときに踏み越えられてしまいます。柵や時間による制限を組み合わせると、うっかりの踏み越えを防ぎやすくなります。
床に引いた線は、車両のタイヤやフォークが繰り返し通ることで、数か月もすれば色が薄れていきます。薄れた線は、遠目にはまだ引いてあるように見えても、実際には車両と歩行者の区別として機能しなくなっています。動線分離は一度整備して終わりではなく、線の色や柵の位置を定期的に見直す運用があって初めて維持されます。
通路をふさぐ資材が事故を作る
通路の幅がタイル入りパレットなどの積荷ではみ出し、歩行者の逃げ場がなくなっている場面もあります。後退してくるフォークリフトのカウンターウェイトと積荷の間に立ってしまうと、隙間はすでに体1つ分の幅しかありません。
このような状況で車両が後退を続けると、逃げ場のない隙間に体を寄せる以外の選択肢がなくなります。通路の幅は、車両の幅に人が逃げられる余裕を足した広さが必要です。積荷がはみ出しているのに気づいたら、その日のうちに直すことが欠かせません。
交差点になりやすい4つの場所を洗い出す
場内の動線は、平面図の上では単純な一本道に見えても、実際には人と車両が交わる「交差点」がいくつも生まれています。搬入口の前、通路の曲がり角、資材置き場の出入口、倉庫の出入口付近です。これらの場所に共通するのは、車両の死角と歩行者の油断が同時に重なりやすいという点です。
| 場所 | 起きやすい場面 | 対応 |
|---|---|---|
| 搬入口の前 | 荷の積み下ろし中に歩行者が横切る | 荷役中は歩行者の通行を一時的に止める |
| 通路の曲がり角 | 双方が死角から同時に出てくる | カーブミラーを設置し、手前に減速帯を作る |
| 資材置き場の出入口 | 積荷の出し入れで車両が頻繁に往復する | 出入口を歩行者通路と分けて設ける |
| 倉庫の出入口 | 荷を高く上げたまま通過する | 出入口の手前で荷を下げるルールを徹底する |
平面図を描くだけでは、こうした交差点は見えてきません。実際に現場を歩き、車両と歩行者がどこで顔を合わせるかを確認する作業が欠かせません。曲がり角では、双方とも相手の存在を知らないまま同時に進入し、鉢合わせになった瞬間に初めて気づくという場面が繰り返し起きています。
バック時の死角と誘導
フォークリフトの後退時、運転者は前を向いたまま下がっていることがあります。前を向いたままの姿勢では、後方に人がいても目に入りません。後退は、体をひねって進む先を確認しながら行うのが基本です。
後方の確認が難しい場面では、誘導員を配置します。誘導員がいれば、運転者は誘導の合図に従って速度や向きを判断できます。誘導員を置かない場合でも、歩行者が機械の後ろを通る必要があるときは、運転者と目を合わせて相手がうなずくのを待つという一手間が有効です。手を上げるだけで通過するのではなく、見えたことを確かめてから一歩を出す習慣が、はさまれを防ぎます。
凸面鏡やバックセンサーを設置している現場もありますが、これらは死角を完全に消す道具ではありません。鏡は見る側が意識して覗き込まなければ役に立たず、センサーには誤作動や検知範囲の限界があります。装備に頼りきらず、誘導員の配置と目を合わせる運用を基本に据える必要があります(出典:岩手労働局・厚生労働省「フォークリフトを使用する事業場の皆様へ」)。
労働安全衛生規則第151条の7は、運転中の車両系荷役運搬機械等またはその荷に接触するおそれのある箇所への立入りを禁止すること、ただし誘導者を配置してその者に誘導させるときはこの限りでないと定めています(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。誘導員の配置は、立入禁止という原則の例外として位置づけられています。
速度をどう決めるか
労働安全衛生規則第151条の3は、車両系荷役運搬機械等を用いる作業について、あらかじめ作業計画を定め、運行経路と作業方法を関係労働者に周知させなければならないと定めています。制限速度は、場所ごとの広さや地形、車両の種類・能力に応じて事業者が定める運用です。
通路が狭い倉庫内と、開けたヤードでは、同じ速度を当てはめること自体が無理があります。曲がり角の手前、資材の搬入口付近など、視界が制限される区間ほど速度を落とす取り決めが必要です。速度の取り決めは、運転者だけでなく歩行者にも周知して初めて機能します。
区間ごとの速度を色分けした簡単な案内板を通路脇に置くだけでも、運転者は次の区間で速度を落とす準備ができます。案内板がなければ、運転者は自分の感覚だけで速度を判断することになり、現場ごとの取り決めが個人差に委ねられたままになります。
ルールを掲示で終わらせない
動線図や速度の取り決めを掲示するだけでは、日々の緊張感は保てません。掲示物は、現場に入って最初の数日は見られますが、慣れた頃には目に入らなくなります。
有効なのは、朝礼やKYの中で「今日どこで車両と人が交わるか」を短く確認する運用です。搬入予定や作業範囲の変化に応じて、危険な交差点は日によって変わります。前日と同じ想定のまま進めると、変化に気づけません。
人が常に配置できない小規模な現場では、誘導員を専任で置く代わりに、搬入・搬出の時間帯だけ全員に無線や声かけで知らせる運用が現実的です。動線図を貼るだけで終わらせず、「今日は何時に車両が入るか」を毎朝共有する一手間が、掲示物の形骸化を防ぐ最初の一歩になります。
短時間の動画で「同じ通路を歩いていて挟まれる」場面を見せる方法は、掲示物よりも記憶に残りやすいという特徴があります。安全ドリル+のような教材は、当日の工種に合わせて1本目の映像を選び、残り4本はランダムに表示する設計です。教材が薄い工種でも、同じ映像ばかりが並びにくくなっています。
毎日のKY活動をどう記録に変えるかは、毎日のKY活動を記録に変えるを参照してほしい。
本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、社会保険労務士等の専門家、または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。
まとめ
- 建設業における「はさまれ・巻き込まれ」の死傷者数は令和7年で1,496人。多くは同じ通路を車両と歩行者が共有する場面で起きます(令和7年確定値、厚生労働省)
- 動線は「線・柵・時間」の3つで分けると、うっかりの踏み越えを防ぎやすくなります
- 積荷がはみ出した通路や、後退時の死角は、その日のうちに直す・誘導員を置く対応が必要です
- 労働安全衛生規則第151条の3は作業計画の策定、第151条の7は接触のおそれのある箇所への立入禁止を定めています
- 掲示物だけでなく、朝礼やKYで「今日どこで交わるか」を確認する運用が形骸化を防ぎます
実際の画面を1分半で試す
QRを読むと10秒の映像が5本流れ、最後の1問だけが記名の記録として残ります。 アプリのインストールもログインも要りません。
- 職人が見る画面をそのまま試す
- サービスガイド(PDF) — 導入の流れと記録の様式
- 料金 — 1現場あたりの月額
よくある質問
Q. フォークリフトの誘導員には資格が必要ですか
誘導員そのものに専用の免許はありません。ただし、誘導方法や合図の統一など、現場ごとに教育しておくことが実務上重要です。
Q. 歩行者用通路と車両通路は必ず物理的に分ける必要がありますか
労働安全衛生規則は、接触のおそれのある箇所への立入りを禁止するか誘導者を配置することを求めています。物理的な分離が難しい場所では、誘導員の配置が代替手段になります。
Q. 荷を高く上げたまま走行してはいけないのはなぜですか
前方視界がふさがれ、歩行者や障害物に気づくのが遅れるためです。走行時は荷を低く下げ、上げるのは積み下ろしの瞬間に限るという運用が基本です。
Q. 場内の制限速度に法令上の数値基準はありますか
労働安全衛生規則第151条の3は、場所ごとの広さや地形、車両の種類・能力に応じて事業者が作業計画の中で定めることを求めており、一律の数値基準はありません。現場の状況に応じて定め、周知する必要があります。