安全ドリル+ 現場の安全教育を朝礼前の1分半で

安全衛生推進者は10人から|小規模事業場でやることを整理

約6分で読めます 安全ドリル+編集部
安全衛生推進者衛生推進者10人小規模事業場建設業
共通の現場で起きる転倒の場面(安全ドリル+の教材より)
安全ドリル+の教材より

安全衛生推進者の選任が必要な事業場の規模と業種、衛生推進者との違い、資格要件と職務の範囲を、安衛法と安衛則の条文にもとづいて整理する。

安全管理者や衛生管理者は50人以上の話、という認識で止まっている小規模事業者は多い。しかし50人に満たない事業場にも、安全衛生推進者という選任義務が存在する。ここを見落としたまま何年も運用している会社は珍しくない。

本稿では、安全衛生推進者の選任が必要な規模と業種、衛生推進者との違い、資格要件と職務の範囲を整理する。

安全ドリル+を1問だけ試す · 10秒の映像 → 3択

安全衛生推進者とは

安全衛生推進者とは、安全管理者・衛生管理者の選任を要する規模には至らない小規模な事業場において、安全衛生に係る業務を担当する担当者をいう。安衛法第12条の2は、安全管理者を選任すべき事業場(第11条第1項)および衛生管理者を選任すべき事業場(第12条第1項)以外の事業場のうち、政令で定める規模のものについて、安全衛生推進者を選任することを事業者に求めている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。

安全管理者・衛生管理者が50人以上の事業場を対象にするのに対し、安全衛生推進者はそれに満たない、より小規模な事業場を対象にした制度である。50人以上向けの体制については、安全管理者の選任は50人からであわせて確認できる。

対象になる規模と業種

安全衛生推進者の選任が必要になるのは、安全管理者・衛生管理者の選任義務がない事業場のうち、常時10人以上の労働者を使用する事業場である。建設業を含む一定の業種では「安全衛生推進者」、それ以外の業種では「衛生推進者」という名称で選任する制度になっている。

つまり、労働者数が10人未満の事業場には選任義務が生じない一方、10人以上50人未満という中間の規模の事業場には、安全管理者・衛生管理者ほど本格的ではないにせよ、何らかの安全衛生の担当者を置くことが求められている。「50人未満だから何もしなくてよい」という誤解は、この制度の存在を見落とすことで生じやすい。

建設業では、本社は数人規模でも、複数の現場に散らばる作業員を合算すれば10人を超える会社は多い。事業場としての労働者数をどう数えるかは、安全管理者・衛生管理者の場合と同様、その事業場に常態として使用される労働者を基準にする。小規模な建設会社ほど、この制度の対象になっているにもかかわらず、選任していない例が実務では目立つ。

衛生推進者との違い

安全衛生推進者と衛生推進者の違いは、担当する業務の範囲にある。建設業のように労働災害の危険性が比較的高いとされる業種では、安全に関する事項と衛生に関する事項の両方を担う安全衛生推進者を選任する。一方、危険性が比較的低いとされる業種では、衛生に関する事項に特化した衛生推進者を選任すればよい構成になっている。

建設業の事業場は、原則として安全衛生推進者を選任する側に区分される。自社の業種がどちらに該当するかを、選任前に確認しておく必要がある。

同じ会社の中でも、建設工事を直接請け負う部門と、資材の製造や事務作業を担う部門とで、業種の扱いが分かれる場合がある。複数の事業を営む会社では、事業場ごとにどちらの区分が適用されるかを個別に判断する必要があり、本社の一部門だけを見て全社一律に判断してしまうと、判断を誤ることがある点に注意したい。

資格要件と講習

安全衛生推進者の資格要件は、安全管理者・衛生管理者ほど厳格な学歴・実務経験要件を求めるものではなく、一定の実務経験を積んだ者や、都道府県労働局長の登録を受けた機関が行う講習を修了した者が対象になる。

小規模な事業場でも無理なく選任できるよう、要件のハードルが相対的に低めに設定されているのが特徴である。ただし要件を満たさない者を形だけ選任しても、実質的な意味を持たない点は他の役職と変わらない。

講習は労働基準協会などの登録機関が地域ごとに開催しており、人手が限られる小規模事業場でも受講しやすいよう設計された制度になっている。開催日程や内容は主催団体によって異なるため、受講を検討する際は最寄りの開催団体に直接確認するとよい。資格取得のハードルの低さを理由に、選任自体を後回しにする必要はない。

職務の範囲

安全衛生推進者の職務は、施設・設備の点検、整理整頓の状況確認、安全衛生教育の実施、健康診断の実施に関する事務、労働災害の原因調査への協力など、安全衛生に関する幅広い業務に及ぶ。安全管理者・衛生管理者のように専門的な技術判断を単独で担うというより、事業場の安全衛生活動を実務面で回していく役割に近い。

小規模な事業場では、経営者自身や現場の責任者が安全衛生推進者を兼ねる例も多い。他の業務と兼任すること自体は禁じられていないが、日々の業務に追われて安全衛生の職務が後回しにならないよう、担当する業務の範囲をあらかじめ明確にしておくことが望ましい。

選任したことをどう周知するか

安全衛生推進者を選任したときは、その氏名を作業場の見やすい箇所に掲示するなどして、関係する労働者に周知させることが安衛則で求められている。安全管理者・衛生管理者と異なり、所轄の労働基準監督署長への選任報告書の提出は義務づけられていない点が実務上の違いになる。

報告義務がないぶん、選任したこと自体が対外的に確認されにくい制度でもある。だからこそ、社内の掲示や体制図への反映を怠らず、選任の事実を組織的に残しておく必要がある。労働基準監督署の臨検の際には、掲示や記録をもって選任の事実を説明することになるため、口頭での説明だけに頼らない備えが求められる。

小規模でも記録は要る

労働者数が少ない事業場ほど、安全衛生に関する記録が「特に何も起きていないから不要」という扱いになりがちである。しかし小規模事業場であっても、労働災害が発生した際には、安全衛生推進者を選任していたか、実際に機能していたかが確認される。

日々の安全衛生教育の実施記録を、小規模な事業場でも無理なく継続できる形で残しておくことが、いざというときの説明材料になる。担当者が経営者を兼ねているような小規模事業場ほど、日々の業務に追われて記録が後回しになりやすいため、負担の少ない仕組みをあらかじめ整えておく価値がある。日々のKY活動を記録として積み上げる基本的な考え方は、毎日のKY活動を記録に変えるで整理している。

規模ごとに何を選任するかをまとめた早見表をPDFで用意している。 登録は要らない。安全衛生管理体制の早見表(PDF) からそのまま落とせる。

本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、社会保険労務士等の専門家、または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。


実際の画面を1分半で試す

QRを読むと10秒の映像が5本流れ、最後の1問だけが記名の記録として残ります。 アプリのインストールもログインも要りません。


よくある質問

Q. 労働者数が9人の事業場は何もしなくてよいのですか

安全衛生推進者・衛生推進者の選任義務は常時10人以上の事業場から生じるため、9人以下の事業場には法令上の選任義務はない。ただし規模に関わらず、安全衛生教育や労働災害防止への取り組みは望ましい対応として続けることができる。人数が増えて義務が生じる直前から準備を始めておくと、切り替えがよりスムーズになる。

Q. 建設業でも衛生推進者を選任すればよい場合はありますか

建設業は原則として安全衛生推進者を選任する側に区分される業種である。ただし事業場が行う具体的な事業内容によって区分が変わる場合もあるため、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署にあらかじめ確認しておくのが確実である。

Q. 安全衛生推進者を選任した後、労働基準監督署への届出は必要ですか

安全管理者・衛生管理者とは異なり、安全衛生推進者の選任について所轄の労働基準監督署長への報告義務は定められていない。ただし社内での周知と記録はきちんと行っておく必要がある。

安全衛生推進者衛生推進者10人小規模事業場建設業