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度数率と強度率の出し方|建設業の実数値で自社の位置を語る

約8分で読めます 安全ドリル+編集部
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共通の現場で起きる巻き込まれの場面(安全ドリル+の教材より)
安全ドリル+の教材より

度数率・強度率の定義式と分母の数え方を整理し、厚生労働省の最新調査から建設業の実数値を示します。自社の数字をどう説明するかの手順です。

「うちの現場の安全成績は、他と比べて良いのか悪いのか」。

元請の会議でこう聞かれて、答えに詰まった経験はないでしょうか。感覚で「頑張っている」と答えても、次の質問は必ず「数字では」です。

安全成績を説明する共通言語が、度数率と強度率です。この2つは業種を問わず使われる指標で、厚生労働省が毎年、業種別の実数値を公表しています。

この記事では、度数率・強度率の定義式と、建設業の最新実数値を整理します。自社の数字をどう位置づけて話すかまで扱います。

度数率・強度率のもとになっているのは、厚生労働省が毎年公表している労働災害動向調査です。常用労働者100人以上の事業所を対象にした事業所調査と、建設現場を母集団にした総合工事業調査の2本立てで実施されています(出典:厚生労働省「労働災害動向調査」)。

数字の説明力を高めるには、まず日々の教育がどれだけ実施されているかを可視化する必要があります。安全ドリル+は、その土台になる記名記録を毎日残す仕組みです。anzendrill.com

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度数率とは何か

度数率とは、100万延べ実労働時間あたりの労働災害による死傷者数のことです。災害が起きる頻度を表します。

計算式は次の通りです。

度数率 = 労働災害による死傷者数 ÷ 延べ実労働時間数 × 1,000,000

分子の死傷者数には、休業1日以上、または身体の一部やその機能を失った災害の被災者を数えます。同じ人が2回被災したら、2人と数えます。

分母の延べ実労働時間数は、対象期間中に働いたすべての労働者の労働時間を合計した値です。常用労働者だけでなく、臨時・日雇労働者も含みます(出典:厚生労働省「令和6年労働災害動向調査の概況」)。

強度率とは何か

強度率とは、1,000延べ実労働時間あたりの延べ労働損失日数のことです。災害の重さの程度を表します。

計算式は次の通りです。

強度率 = 延べ労働損失日数 ÷ 延べ実労働時間数 × 1,000

労働損失日数は、被災の重さに応じて日数が決まっています。死亡と永久全労働不能は7,500日、永久一部労働不能は身体障害等級に応じて50〜5,500日です。一時的な休業は、暦日の休業日数に300/365を掛けた日数になります(出典:前掲、厚生労働省「令和6年労働災害動向調査の概況」)。

度数率が「起きた回数」を見る指標なら、強度率は「1件がどれだけ重かったか」を見る指標です。件数が少なくても、重い災害が1件あれば強度率は跳ね上がります。

分母をどう数えるか

度数率も強度率も、分母は延べ実労働時間数です。ここの数え方で数字が大きく動きます。

建設現場では、元請と複数の下請の作業員が混在します。分母に含めるのは、その現場で働いたすべての労働者の実労働時間です。所属会社を問いません。

集計期間の切り方にも注意が必要です。厚生労働省の調査では、工事現場を対象にした「総合工事業調査」は、有期事業として工事開始から終了までを対象にしています。事業所単位の集計とは母集団が異なります。

自社の数字を出すときは、どの期間・どの現場群を分母にしたかを明記しておく必要があります。分母の取り方を揃えないと、他社の数字と比較しても意味がありません。

具体例で確認します。ある現場で、対象期間の延べ実労働時間数が50万時間、休業4日以上の死傷者が1名だったとします。度数率は「1÷500,000×1,000,000」で2.0になります。この1名の休業日数が暦日60日だったとすると、労働損失日数は「60×300/365」で約49.3日、強度率は「49.3÷500,000×1,000」で約0.10になります。

延べ実労働時間数を、自社の社員だけで数えるか、下請の作業員も含めて数えるかで、この分母は大きく変わります。下請を含めずに計算すると、実際より高い数字が出てしまいます。どの範囲を分母にしたかを、数字とあわせて明記しておく必要があります。

建設業の実数値をどう読むか

厚生労働省の「令和6年労働災害動向調査」によると、総合工事業(建設現場)の令和6年(2024年)の度数率は1.91でした。前年の令和5年(2023年)は1.69で、上昇しています。

強度率も同様に上昇しています。令和6年は0.57、前年の令和5年は0.29でした。死傷者1人平均労働損失日数は296.6日で、前年の174.2日から大きく増えています(出典:厚生労働省「令和6年労働災害動向調査の概況」)。

調査産業計(事業所規模100人以上)でみると、令和6年の度数率は2.10、強度率は0.09でした。数字だけを比べると、総合工事業の強度率は調査産業計の6倍を超えます。

この差は、建設業の災害が墜落・転落など重篤化しやすい型に偏っていることを反映しています。度数率の水準が近くても、強度率が高ければ、1件あたりの重さが違うと説明できます。

工事の種類でも数字の意味は変わる

建設業とひとくくりにしても、工事の種類によって数字の中身は同じではありません。

同じ調査を工事の種類別に見ると、令和6年の土木工事業は度数率2.02(前年1.41)、強度率1.19(前年0.53)でした。建築事業は度数率1.88(前年1.78)、強度率0.39(前年0.22)です(出典:前掲、厚生労働省「令和6年労働災害動向調査の概況」)。

度数率はどちらも近い水準にありますが、強度率は土木工事業が建築事業の3倍近くあります。屋外での重機作業や、地盤・掘削を伴う工事のほうが、いったん災害が起きたときに重くなりやすいと読めます。

自社の現場が土木中心か建築中心かによって、比較すべき相手の数字も変わってきます。同じ「度数率1.9」でも、建築中心の会社と土木中心の会社では、意味合いが違うと考えたほうがよいでしょう。

小規模現場で数字が跳ねる問題

度数率・強度率には、母数が小さいほど数字が不安定になるという弱点があります。

たとえば延べ実労働時間数が少ない小規模現場で1件の重い災害が起きると、度数率も強度率も一気に跳ね上がります。逆に何も起きなければ、両方ともゼロになります。

実際に、同じ調査を請負金額別に見ると、この傾向が数字にも表れています。令和6年は、請負金額10億円以上の工事で強度率0.48だったのに対し、5億円未満の工事では1.05と2倍以上に開いています。度数率は10億円以上1.66、5億円未満2.32で、強度率ほどの差ではありません。専任の安全担当を置きにくい小規模工事ほど、いったん災害が起きたときの重さがぶれやすいとうかがえます(出典:前掲、厚生労働省「令和6年労働災害動向調査の概況」)。

このため、単月・単一現場の数字だけを見て「良い・悪い」を判断するのは危険です。母数が小さいほど、たまたま起きていないだけの可能性が高くなります。

複数現場・複数年で数字を平均する、または現場数・延べ人数もあわせて示すことで、数字の信頼性を補うことができます。

この10年の動きをどう見るか

令和6年の1.91という度数率だけを見ると高く見えますが、単年で語るより、推移をあわせて見たほうが実態に近づきます。

総合工事業の度数率は、上下を繰り返しながら緩やかに上がってきました。平成27年(2015年)は0.92でしたが、令和元年(2019年)には1.69まで上がり、令和2年(2020年)にいったん1.30まで下がったあと、令和6年(2024年)の1.91まで再び上昇しています。

強度率も同様に波があります。令和3年(2021年)は0.41でしたが、令和4年(2022年)は0.22まで下がり、令和6年は0.57と、この10年で最も高い水準になっています(出典:前掲、厚生労働省「令和6年労働災害動向調査の概況」)。

1年だけを切り取って「悪化した」「改善した」と語るのではなく、少なくとも5年程度の推移をあわせて示すことで、単年のぶれと構造的な変化を区別しやすくなります。

数字だけで語らないための補助指標

度数率と強度率は結果指標です。すでに起きた災害を数えるものであり、これから起きる災害を予測するものではありません。

結果指標だけを経営に出すと、「今期は何も起きていないから安全」という誤った安心につながります。実際には、たまたま起きていないだけかもしれません。

補助として使える先行指標には、次のようなものがあります。

これらは度数率・強度率と違い、災害が起きる前の活動量を示します。結果指標と組み合わせて示すことで、「なぜその数字なのか」を説明しやすくなります。

先行指標をどう選ぶかは、KY実施率という指標は意味があるかで詳しく扱っています。

日々の教育記録を積み重ねる仕組みが、こうした先行指標を後から示せる土台になります。毎日のKY活動を記録に変えるにも整理しています。


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よくある質問

Q. 度数率と強度率は、どちらを優先して見ればいいですか。

両方を並べて見る必要があります。度数率だけでは重さが分かりません。強度率だけでは頻度が分かりません。片方が低くても、もう片方が高ければ、傾向を見誤ります。

Q. 自社の度数率を計算するとき、注意すべき点はありますか。

分母の延べ実労働時間数を、どの範囲の労働者で数えるかを明確にしてください。元請だけか、下請を含むか。この前提が揃っていないと、他社や業界平均との比較ができません。

Q. 建設業の数字はなぜ他業種より強度率が高いのですか。

墜落・転落のように、被災すると休業が長引きやすい型の災害が多いためです。件数自体が突出して多いわけではなくても、1件の重さが強度率を押し上げます。

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