グラインダの砥石が割れると、破片は高速で飛散します。件数そのものは多くありませんが、起きたときの被害は大きくなりがちです。厚生労働省が公表した令和7年の労働災害発生状況(確定値)によると、建設業における「破裂」による休業4日以上の死傷者数は13人、全産業では71人に上ります(出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定)」)。この記事では、砥石が割れる前の兆候と、交換後に必ず行うべき試運転の根拠を整理します。
安全ドリル+を1問だけ試す · 10秒の映像 → 3択
砥石が割れるとどうなるか(飛散方向)
砥石が割れると、破片は回転している面の延長線上、つまり作業者の顔と腹の高さに向かって飛びます。安全カバーを外したまま携帯用グラインダーを使い、保護めがねも着けずに作業している場面では、破片を受け止めるものが何もありません。
回転する砥石の延長線上に、別の作業員が立ち止まっている場合も危険です。破片はまっすぐ前方へ飛んでいくため、その延長線を避けて立つという判断が必要になります。作業をしている本人が延長線を意識していても、後から近づいてきた別の作業員が気づかずに立ち入ることもあり、周囲への声かけと立入りの制限を組み合わせる必要があります。
割れる前の兆候(欠け・ひび・保管)
砥石は消耗品であり、使うほど薄くなっていきます。薄くなった砥石は、新品のときと同じ力で押し当てても、内部にかかる負荷が相対的に大きくなり、割れやすさが増していきます。摩耗の進み具合も、欠けやひびと同じように、交換の判断材料として見ておく必要があります。
砥石が割れる前には、欠けやひびといった兆候が現れていることがあります。砥石の縁が欠けたまま使い続けると、その欠けた箇所を起点に割れが進みます。回す前に光に当てて縁を見るという一手間で、欠けに気づける場合があります。
保管の状態も割れやすさに影響します。砥石を重ねて置いたり、湿気の多い場所に置いたりすると、目に見えない内部の傷みが進むことがあります。取り付ける前の砥石も、見た目だけで判断せず、扱いに注意を払う必要があります。
砥石を落としてしまった場合も、見た目に傷がなくても内部にひびが入っていることがあります。落下した砥石は、その場で使わずに一度分けておき、試運転で異常がないか確かめてから使うか、疑わしい場合は交換するという判断が安全です。落とした瞬間は「割れなかったから大丈夫」と思いがちですが、割れる前兆は使い始めてから現れることもあります。
交換後の試運転1分の根拠
労働安全衛生規則第118条は、研削といしについて、その日の作業を開始する前には1分間以上、研削といしを取り替えたときには3分間以上、試運転をしなければならないと定めています(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。
取り付け直後の砥石は、ゆがみやひびがあっても見た目では分からないことがあります。試運転の間に異常な音や振動が出れば、使用を始める前に気づくことができます。取り付けた本人が、その場で音と振動を確かめることが求められており、次に使う人に確認を委ねる、あるいは月1回の定期点検でまとめて見るという運用では、割れる前兆を見逃すおそれがあります。
取り付ける前に確認すべきもう一つの点は、といしに表示された最高使用周速度と、使用する工具の回転数が合っているかです。表示された速度を超える回転数で使うと、といしの許容範囲を超えた遠心力がかかり、内部にひびが入っていなくても割れやすくなります。工具を持ち替えるたびに、この組み合わせを確認する習慣が必要です。
側面研削がなぜ危険か
切断用の砥石は、縁の部分を使うことを前提に作られています。側面を使って削る作業を続けると、砥石が薄くなり、割れやすい状態に近づきます。削る作業をしたい場合は、削り用に作られた砥石に持ち替えることが必要です。
用途の違う砥石を兼用しようとする判断が、側面研削につながりやすい場面です。切る道具と削る道具を区別して使い分けることが、割れを防ぐ基本になります。
カバーの向きと立ち位置
安全カバーは、砥石と作業者の体の間に位置するように取り付けます。カバーを手元側へ回してしまうと、火花や破片が体に向く配置になります。カバーの向きが決まれば、逃げ道も自然に決まります。
火花が飛ぶ作業では、周囲に飛散防止シートを張る、可燃物を遠ざけるといった対策もあわせて必要です。砥石が割れたときの破片は火花よりもさらに危険度が高く、飛散防止シートだけでは受け止めきれません。カバーの取り付けと保護具の着用は、火花対策とは別に、破裂そのものへの備えとして扱う必要があります。
安全カバーを台の上に外したまま使用している場面も見られます。カバーがない状態で砥石が割れると、破片を受け止めるものがなく、直接体に当たります。作業前にカバーが正しい向きで取り付けられているかを確認することが欠かせません。
端材を固定してから削る
削る対象の端材を万力やクランプで固定せず、手で押さえたまま削っている場面も見られます。手で押さえるだけでは、砥石が食い込んだ瞬間に材が動き、押さえていた力が逃げて手が砥石に近づく結果になります。
作業前と作業中に確認すべき点を、危険な状態と正しい状態で並べると次のようになります。
| 確認項目 | 危険な状態 | 正しい状態 |
|---|---|---|
| 砥石の縁 | 欠けたまま使い続ける | 回す前に光に当てて縁を確認する |
| 端材の固定 | 手で押さえるだけ | 万力やクランプで固定する |
| カバーの向き | 手元側へ回っている | 体と砥石の間に位置している |
| 保護めがね | 台に置いたまま作業する | 電源を入れる前に着ける |
万力を使う一手間を惜しむと、材が動いた瞬間に対応する余裕がなくなります。固定してから削るという順番を、カバーの確認と同じくらい徹底する必要があります。
特別教育の対象になる作業
労働安全衛生規則第36条第1号は、研削といしの取替えまたは取替え時の試運転の業務を、特別教育を必要とする危険または有害な業務として定めています(出典:厚生労働省の労働安全衛生規則)。取替えと試運転の作業は、砥石の破損や飛散による災害を防ぐため、資格ではなく特別教育の修了を前提とした業務です。
特別教育を受けずにこの業務にあたることは、事業者・作業者の双方に罰則の対象となり得ます。取替えの機会は日常的にあるため、対象となる作業員全員が特別教育を修了しているかを、現場ごとに確認しておく必要があります。
現場では、といしの交換を「使い慣れた作業」として、特別教育の対象だと意識しないまま任せてしまう場面が見られます。取替え自体は数分で終わる作業のため、資格の要否が意識されにくいところに落とし穴があります。作業員名簿と特別教育の修了記録を突き合わせ、交換作業に入る前の時点で対象者を確認しておくことが、形だけの確認で終わらせない運用につながります。
短い動画で「安全カバーを外したまま使う」「欠けた砥石のまま回す」場面を見せる方法は、文章での説明よりも記憶に残ります。安全ドリル+のような教材は、当日選んだ工種に合わせて1本目の映像を選び、残り4本はランダムに表示する設計です。研削作業を伴う日には、こうした場面が題材として選ばれやすくなります。
毎日のKY活動をどう記録に変えるかは、毎日のKY活動を記録に変えるを参照してほしい。
本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、社会保険労務士等の専門家、または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。
まとめ
- 建設業の「破裂」死傷者数は13人(全産業71人、令和7年確定値、厚生労働省)。件数は少ないが被害は大きくなりがちな型です
- 砥石の欠けやひびは、回す前に光に当てて確認できる場合があります
- 労働安全衛生規則第118条は、作業開始前1分以上、取替え時3分以上の試運転を義務づけています
- 切断用の砥石を側面研削に使うと薄くなり割れやすくなります。用途に応じた砥石への持ち替えが必要です
- 労働安全衛生規則第36条第1号は、砥石の取替え・試運転の業務を特別教育の対象と定めています
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QRを読むと10秒の映像が5本流れ、最後の1問だけが記名の記録として残ります。 アプリのインストールもログインも要りません。
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- サービスガイド(PDF) — 導入の流れと記録の様式
- 料金 — 1現場あたりの月額
よくある質問
Q. 試運転の1分間・3分間は誰が測ればよいですか
作業を行う本人が、作業開始前とといし取替え後にそれぞれ測って試運転を行うことが求められています。時間を守ること自体よりも、その間に異常な音や振動がないかを確かめることが目的です。
Q. 特別教育はどこで受けられますか
労働基準協会や技能講習機関などが、研削といしの取替え等特別教育を実施しています。自由研削用と機械研削用で教育の種類が分かれている点に注意が必要です。
Q. 保護めがねをかけていれば、破片を受けても安全ですか
保護めがねは目を守る装備であり、破片が体に当たること自体を防ぐものではありません。カバーの正しい取り付けと、回転面の延長線上に立たないことが、より優先される対策です。
Q. 砥石にひびが入っているかどうかは、見た目だけで分かりますか
光に当てて確認する方法が一般的ですが、微細なひびは見た目だけでは判断しきれない場合もあります。少しでも異常を感じたら、その砥石は使用を中止し交換することが望ましいとされています。