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玉掛けワイヤの素線切れはどこで捨てるか|点検の基準と手順

約7分で読めます 安全ドリル+編集部
玉掛けワイヤロープ素線切れ廃棄基準建設業 労働災害
高所の現場で起きる落下の場面(安全ドリル+の教材より)
高所 落下 安全ドリル+の教材より

玉掛けワイヤロープの素線切れによる廃棄基準と、使う前の点検手順、見つけたときの扱いをクレーン等安全規則にもとづき整理しました。

玉掛けで使うワイヤロープは、使い続けるうちに素線が少しずつ切れていきます。切れた素線は元に戻らず、見た目では強さの低下に気づきにくいという性質があります。厚生労働省が公表した令和7年の労働災害発生状況(確定値)によると、建設業における「飛来・落下」による休業4日以上の死傷者数は1,127人に上ります(出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定)」)。この記事では、素線切れワイヤの廃棄基準と、使う前に見るべき点を整理します。

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廃棄基準(1よりの間で10%)の読み方

クレーン等安全規則第215条は、1よりの間においてフィラ線を除く素線の数の10%以上の素線が切断しているワイヤロープを、クレーン・移動式クレーンまたはデリックの玉掛用具として使用してはならないと定めています(出典:e-Gov法令検索 クレーン等安全規則)。

「1より」とは、ワイヤロープが1回転してもとの位置に戻るまでの区間をいいます。この区間の中で、素線の数の10%以上が切れていれば、その時点で使用禁止の対象になります。全長で数えるのではなく、区間ごとに数える点が実務上の注意点です。

全長のうち一部だけが傷んでいるワイヤは、離れた場所から見ると異常がないように見えることがあります。傷みは、フックにかかる根元付近や、荷を包む折り返し部分など、力が集中する箇所に偏って現れやすい傾向があります。点検のときは全長を均等に見るのではなく、力がかかりやすい箇所を重点的に確認する視点が必要です。

現場で実際に見られる場面では、素線切れが複数本、針のように飛び出したワイヤで荷を吊り上げようとしていることがあります。素手でこうしたワイヤに触れると、飛び出した先端がそのまま手のひらに刺さります。素線が1本でも切れたワイヤは、その場で取りかえるという判断が基本になります。

素線切れ以外の廃棄基準(直径減少・キンク・腐食)

熱による変化とは、溶接の火花やアーク熱がワイヤに触れて変色・変質した状態を指します。玉掛け作業のそばで溶接や溶断が行われる現場では、火花がワイヤに飛んでいないかも点検の対象に含める必要があります。

クレーン等安全規則第215条は、素線切れ以外にも複数の廃棄基準を定めています。直径が公称径の7%を超えて減少しているもの、キンク(よじれ)が生じているもの、著しい形くずれや腐食があるもの、熱による変化が見られるものが対象です。

キンクが一度でも入ったワイヤロープは、見た目がまっすぐに戻っても内部の素線が切れている可能性があります。一度折れた箇所は強さが元に戻らないため、キンクが残ったワイヤはそのまま処分するという判断が必要です。

点検の手順(布を当てて送る)

素線切れは、切れた先端が針のように鋭く飛び出しているため、素手でなぞると手を切ります。点検は手袋をした上で、布をワイヤに当てながら全長を送る方法が有効です。切れた素線があれば、布が引っかかった位置で止まります。

吊り角度にも注意が必要です。2本のワイヤで荷を吊るとき、吊り角度が開きすぎると、1本にかかる力が増します。60度を超えるような開いた角度で吊ると、素線切れが進んでいるワイヤに、通常より大きな負荷がかかることになります。

クレーン等安全規則が定める廃棄基準は4つに整理できます。

廃棄基準内容点検時の確認方法
素線切れ1よりの間で素線の10%以上が切断布を当てて全長を送り、引っかかりを確認する
直径減少公称径から7%を超えて減少ノギスで複数箇所を測り、公称値と比べる
キンクよじれが生じている全長を目視し、折れ跡や曲がりを確認する
形くずれ・腐食著しい変形や腐食がある表面の色・凹凸を目視で確認する

地切りで一度止めて水平を確認する

掛け位置が荷の重心からずれていると、巻き上げの途中で荷が傾きます。傾いたまま巻き上げを続けると、傾いた側のワイヤに通常より大きな力がかかり、素線切れの進行を早める原因になります。

地面から荷がわずかに浮く「地切り」の高さで一度止め、水平になっているかを確認してから本づりに入る手順が必要です。荷が回り始めた場合も、手で止めようとせず、介錯ロープで向きを操作します。手を荷に添えて止めようとすると、回転する荷に指を挟むおそれがあります。

見つけたときにどうするか

点検で素線切れやキンクを見つけたら、その場で棚から外して分けるという対応が必要です。印を付けて棚に戻す、軽い荷にだけ使うという判断は、いずれも次に使う人が同じワイヤを手に取る可能性を残します。

見つけた位置に印を付けずに戻すと、次に点検する人が同じ箇所を一から探すことになります。布やテープで見つけた位置を残しておくと、記憶に頼らずに済みます。

キンクが入ったワイヤロープは、素線切れとは違う壊れ方をする点にも注意が必要です。折れた瞬間に内部の素線がまとめて切断されるため、外から見える切れ端が少なくても、その一箇所の強度は大きく落ちています。点検で「素線切れは少ないがキンクがある」というワイヤを見つけたときに、切れ数だけを基準に使用を続けてしまうと、キンク特有の弱さを見落とすことになります。廃棄基準は複数あり、どれか1つに該当すれば使用禁止という前提を、点検する側が忘れないようにする必要があります。

使用中の棚と使えない棚を分ける

同じ棚に使えるワイヤと使えないワイヤが混ざっていると、いずれ誰かが使えないワイヤを手に取ります。使えないと分かったワイヤは、印を付けるだけでなく、棚そのものを分けて置く運用が確実です。

棚を分けたあとも、使用中のワイヤが古くなるにつれて、点検の頻度が緩みがちになるという別の課題が残ります。導入した直後は毎回点検していても、慣れた頃には見た目の印象だけで判断してしまう場面が出てきます。棚を分ける運用と、点検記録を都度残す運用は、どちらか一方では足りず、両方を組み合わせて初めて機能します。

吊り荷の真下に人が立つ場面も、素線切れによる落下と組み合わさると重大な事故につながります。切れるときは前触れなく切れるため、よけるのではなく、最初から真下に立たないという判断が優先されます。真下は囲って表示し、誰も入れない状態を作っておく必要があります。

点検記録の残し方

点検した日付と見た人を、ワイヤに付ける札に書き残すことが実務上の対応です。札が付いていない、あるいはいつ点検したか読み取れないワイヤは、点検済みかどうかを判断できないため、棚から一度下ろして確認する対象になります。

玉掛け技能講習では廃棄基準を数値として学びますが、実際の現場で数値通りに数え切るのは簡単ではありません。素線の数を厳密に数えるより、「切れが複数見える時点で交換する」という運用のほうが、現場では機能しやすいという側面もあります。基準の数値は最低限の線であり、それを待たずに交換する判断を妨げるものではありません。

短い動画で「素線切れが飛び出したワイヤで荷を吊る」場面を見せる方法は、文章での説明よりも危険の実感が伝わりやすくなります。安全ドリル+のような教材は、当日選んだ工種に合わせて1本目の映像を選び、残り4本はランダムに表示する設計です。玉掛けを伴う作業の日には、ワイヤの点検場面が題材として選ばれやすくなります。

毎日のKY活動をどう記録に変えるかは、毎日のKY活動を記録に変えるを参照してほしい。

本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、社会保険労務士等の専門家、または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。

まとめ


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よくある質問

Q. 素線切れが1本だけならまだ使ってもよいですか

クレーン等安全規則第215条の基準は「1よりの間で10%以上」であり、1本の切断がただちに基準超過とは限りません。ただし基準に近づいている兆候として、その場で交換を検討する判断が実務上は望ましいとされています。

Q. ワイヤロープの点検はどのくらいの頻度で行うべきですか

法令上、使用前の点検が求められています。加えて、定期的な点検記録を残す運用を組み合わせることで、劣化の進み方を追いやすくなります。

Q. キンクが入ったワイヤロープを、まっすぐに伸ばして使うことはできますか

見た目がまっすぐに戻っても、内部の素線がすでに切れている可能性があるため、使用を続けることは推奨されません。

Q. 吊り角度はどのくらいまでなら問題ありませんか

吊り角度が開くほど1本あたりの負荷が増します。角度が大きく開く場合は、より長いワイヤロープに替えるなどの対応が必要です。

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