「休業4日未満の分は、まとめて出せばいいんだよね」。この認識のまま四半期の締め日を過ぎてしまう総務担当者は少なくありません。
労働者死傷病報告は、2025年(令和7年)1月1日から電子申請が原則義務化されました。様式そのものも変わり、これまで手書きの自由記入だった項目がプルダウン選択に置き換わっています。制度が変わったタイミングは、運用ミスが起きやすいタイミングでもあります。
この記事では、電子申請の具体的な手順と、休業4日未満の報告で特に間違えやすい提出期限を整理します。
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2025年1月から労働者死傷病報告の電子申請が義務化
厚生労働省の公表資料によると、令和7年(2025年)1月1日以降に報告受付となる労働者死傷病報告について、電子申請による報告が義務付けられました。電子申請が困難な場合は、当面の間、書面による報告も認められています。
見落とされやすいのが適用の起点です。令和6年12月31日以前に発生した労働災害であっても、1月1日以降に報告を受け付ける分からは電子申請の対象になります。つまり「災害がいつ起きたか」ではなく「いつ報告するか」で電子申請の要否が決まります。
様式自体も改正されました。改正されたのは、事業の種類、被災者の職種、傷病名及び傷病部位、災害発生状況及び原因、国籍・地域及び在留資格の5項目です。従来は手入力・自由記入だった箇所が、プルダウン選択またはコード入力に統一されています。特に災害発生状況及び原因は、記載方法の問い合わせが多かったことを踏まえ、5段階構成の記入方式に変更されました。令和7年1月1日以降、従前の安衛則様式第23号・第24号は使用されません。
そもそも労働者死傷病報告とは何か
労働者死傷病報告は、労働安全衛生規則第97条に定める労働災害等が発生した場合に、事業者が所轄労働基準監督署へ提出する報告です。同条が対象とするのは、労働災害その他就業中または事業場内もしくはその附属建物内における負傷、窒息または急性中毒により死亡し、または休業した場合です。
つまり、業務中の負傷・窒息・急性中毒による死亡または休業に該当しなければ、そもそもこの報告は不要です。一方で、該当する場合は、休業日数に関わらず報告義務が生じます。ここから先の手続きが、死亡・休業4日以上のケースと、休業4日未満のケースとで分かれます。
死亡・休業4日以上と休業4日未満、報告のルールが違う
労働者死傷病報告には、死亡及び休業4日以上の災害と、休業4日未満の災害の2種類があり、それぞれ提出期限が異なります。
死亡及び休業4日以上の災害は、労働災害が発生してから死亡または休業したときに遅滞なく報告する必要があります。四半期でまとめる余地はなく、災害の都度、速やかに手続きすることが前提です。
これに対し、休業4日未満の災害は、1〜3月、4〜6月、7〜9月、10〜12月の期間ごとに取りまとめて報告する仕組みです。ここが実務上もっとも間違えやすいポイントなので、次の見出しで詳しく整理します。
休業4日未満は四半期報告、期限を1か月分だけ早く覚える
休業4日未満の労働者死傷病報告は、四半期ごとに取りまとめ、その期間における最後の月の翌月末日までに提出します。厚生労働省が示す具体例では、4月4日に労働災害が発生した場合、その災害は4〜6月分の四半期に含まれ、期限は7月31日です。
この期限を、災害発生日を起点に「3か月後」と覚えてしまうと、月をまたぐたびに1か月ずれます。正しくは「災害が発生した四半期の最終月」を基準に、その翌月末日です。1月〜3月に発生した分であれば4月末日、10月〜12月に発生した分であれば翌年1月末日が期限になります。
年末年始をまたぐ10〜12月分は、担当者の異動や引き継ぎの時期と重なりやすく、報告漏れが起きやすい期間です。四半期の区切りと期限をカレンダーに落とし込み、誰が見ても分かる形で残しておく価値があります。
電子申請の手順(帳票入力支援サービス)
電子申請には、厚生労働省が提供する「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」(https://www.chohyo-shien.mhlw.go.jp)を利用します。手順は次のとおりです。
- 帳票入力支援サービスのトップ画面で「帳票作成メニューへ(電子申請を利用する方はこちら)」を選択する
- e-Govアカウント、GビズID、Microsoftアカウント、Googleアカウントのいずれかでログインする
- 「労働者死傷病報告(死亡及び休業4日以上)」または「労働者死傷病報告(休業4日未満)」を選び、該当する手続きに進む
- 申請者情報と傷病病報告の内容を入力する。入力途中でも60分で通信が切断されるため、こまめに一時保存する
- 必須項目をすべて入力した後、申請内容をPDFで出力して内容を確認し、電子申請する
入力データは一時保存でき、保存したファイルを読み込めば途中から再開できます。過去に保存したデータを再利用すると入力の手間は減りますが、事業場の情報が変わっている場合の修正漏れには注意が必要です。申請後は、到達番号を控えておくと、申請案件一覧から処理状況を確認できます。
書面提出と罰則、実務担当者が押さえておくこと
電子申請が原則ですが、パソコン端末を所持していないなど電子申請が困難な事情がある場合は、当面の間、書面による報告も認められています。とはいえ「困難な事情」がない事業場が書面のみで済ませ続けることは想定されていません。段階的に電子申請へ移行する準備を進めておくことが実務上は現実的です。
報告義務そのものは、電子申請の義務化以前から労働安全衛生法第100条に基づいて課されています。同条の報告義務に違反し、報告をしない、または虚偽の報告をした場合は、同法第120条により50万円以下の罰金の対象となり得ます。電子申請への移行はあくまで提出手段の変更であり、報告義務の重さそのものは変わっていません。
総務・安全担当が今日からできること
制度改正への対応は、次の3点から始めると抜け漏れが減ります。
- ログイン手段を先に用意する — e-Govアカウント、GビズID、Microsoftアカウント、Googleアカウントのいずれかが必要です。災害発生後に慌てて準備すると、遅滞なく報告すべき死亡・休業4日以上のケースで間に合わなくなります
- 四半期の締め日をカレンダー化する — 1〜3月分は4月末日、4〜6月分は7月末日、7〜9月分は10月末日、10〜12月分は翌年1月末日。休業4日未満の災害が発生した都度、どの四半期に属するかをその場でメモしておくと、締め日での取りまとめ漏れを防げます
- 旧様式の在庫を確認する — 令和7年1月1日以降は従前の様式第23号・第24号を使用しません。社内の記入用テンプレートや手引きが旧様式のまま残っていないか、この機会に確認しておく価値があります
まとめ
- 労働者死傷病報告は、令和7年(2025年)1月1日以降に報告受付となる分から電子申請が原則義務化されました。電子申請が困難な場合は当面書面も可能です
- 令和6年12月31日以前に発生した災害でも、1月1日以降の報告受付分は電子申請の対象です
- 死亡及び休業4日以上は、災害発生の都度、遅滞なく報告します
- 休業4日未満は四半期ごとに取りまとめ、その期間の最終月の翌月末日までに報告します(例:4月4日発生は7月31日が期限)
- 電子申請は厚生労働省の「帳票入力支援サービス」を使い、e-Govアカウント等でログインして行います
- 報告義務そのものは労働安全衛生法第100条に基づき、違反や虚偽報告は同法第120条により50万円以下の罰金の対象となり得ます
なお本記事の内容は2026年8月時点で確認できる厚生労働省の公開資料・法令に基づいています。個別事案への適用は、所轄の労働基準監督署または専門家にご確認ください。
本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、専門家または所轄の行政機関にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。
労働者死傷病報告そのものは事後の手続きですが、報告が必要になる場面を減らすには、日々の安全教育の記録を残し、繰り返し徹底することが有効です。安全ドリル+は、現場のQRを読むと10秒の動画が5本流れ、危険を探して3択に答える形式で、最後の1問だけが氏名・所属会社つきの記名テストとして記録に残ります。所要時間は1分半、アプリのインストールもログインも不要で、監督者は記録をPDFやCSVで出力できます。無料でお試しいただけます。
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よくある質問
Q. 休業4日未満の判断がつかない場合はどうすればよいですか
休業見込み日数で判断します。診断時点で4日以上の休業が見込まれる場合は死亡・休業4日以上の扱いとなり、遅滞なく報告します。休業が4日未満にとどまった場合は、その四半期の取りまとめに含めます。見込みと実際の日数がずれた場合の扱いは、所轄労働基準監督署に確認することをおすすめします。
Q. 電子申請にはe-Govアカウントが必須ですか
帳票入力支援サービスの利用には、e-Govアカウントのほか、GビズID、Microsoftアカウント、Googleアカウントでもログインできます。いずれか一つを事前に用意しておけば申請できます。
Q. パソコンがない事業場はどうすればよいですか
パソコン端末を所持していないなど、電子申請が困難な事情がある場合は、当面の間、書面による報告も認められています。ただし今後の運用方針は変わる可能性があるため、可能な範囲で電子申請への移行準備を進めておくことが実務上は望まれます。
Q. 四半期報告の期限を過ぎてしまったらどうなりますか
報告義務は労働安全衛生法第100条に基づくものであり、報告をしない、または虚偽の報告をした場合は同法第120条により50万円以下の罰金の対象となり得ます。期限を過ぎたことに気づいた時点で、速やかに所轄労働基準監督署に相談し、報告を行うことが望まれます。
Q. 旧様式(様式第23号・第24号)はもう使えませんか
令和7年1月1日以降は、従前の労働安全衛生規則様式第23号及び同第24号は使用されません。帳票入力支援サービスまたは新様式のダウンロードにより、新しい様式で報告する必要があります。