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eラーニングで安全教育は成立するか|記録として残る条件を整理

約6分で読めます 安全ドリル+編集部
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共通の現場で起きる転倒の場面(安全ドリル+の教材より)
安全ドリル+の教材より

安全衛生教育をeラーニングで行う場合に何が問題になりやすいかを、対面が前提の科目・受講の証明・記録という3つの切り口で整理しました。

「eラーニングで受けた研修に、法的な意味はあるのか」。安全教育をオンラインで受けさせようとした担当者から、こう相談されることがある。

結論を先に言うと、この問いに一律の答えはない。教育の種類によって、対面でなければならない要素の有無が異なるためである。この記事では、何が問題になりやすいかを整理し、記録として残す際の考え方をまとめる。

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対面でなければならない教育はあるか

労働安全衛生法は、雇入れ時教育・作業内容変更時の教育・危険有害業務への特別教育を、事業者に行うよう義務づけている(同法第59条、出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。ただし条文自体は、教育を対面で行うかeラーニングで行うかという実施方法までは規定していない。

一方で、特別教育の中には、学科(座学)だけでなく実技(実際の機械や器具を用いた練習)を伴うものが少なくない。実技を伴う科目については、対面での実施が前提になっていると解釈されている。学科部分と実技部分を分けて考える必要がある教育があるという点が、eラーニングの導入を検討する際の出発点になる。

法令が求めている要素

条文が求めているのは、「教育を実施すること」そのものであり、実施方法の細部までを一律に定めているわけではない。実施方法にかかわらず、次のような要素が満たされているかどうかが実務上の論点になる。

これらの要素をどう満たすかは、教育の種類や対象業務によって解釈が分かれる部分がある。個別の教育がeラーニングで実施要件を満たすかどうかの判断は、所轄の労働基準監督署に確認することが確実である。

自社で判断がつかない場合、教育を委託している教育機関やコンサルタントに、対象業務の特別教育がeラーニングで実施できる範囲かどうかを事前に確認しておくことも有効である。実施してから要件を満たしていなかったと分かるより、実施前に確認するほうが手戻りは小さい。

受講したことをどう証明するか

対面の集合教育であれば、その場にいたことが出席簿や署名で確認できる。eラーニングの場合、受講者が実際に最後まで視聴したのか、途中で離席していたのかを、外形的に確認しにくいという課題がある。

視聴履歴やログを記録できるシステムを使えば、いつ・どの程度視聴したかは分かる。しかし「画面を開いていた」ことと「内容を理解した」ことは別の問題である。視聴の証明だけに頼ると、記録としての説得力が弱くなる。

理解したことの確認

視聴のログだけでは足りない部分を補うのが、理解度を確認する仕組みである。視聴後に設問へ回答させ、その正誤を記録に残す形にしておくと、「見ていた」だけでなく「答えた」という記録が残る。

対面の教育でも同じ課題はある。説明を聞いているだけの状態と、実際に問いに答えて理解を示した状態とでは、記録としての強さが異なる。eラーニングであっても対面であっても、理解度を確認する設問を組み込むことが、記録の質を高める共通の工夫になる。

設問の難易度も考慮すべき点である。誰でも正解できる形だけの設問では、理解度を確認したことにならない。かといって難解すぎる設問は、正しく理解している人まで不正解にしてしまう。実際の作業で問われる判断に近い形の設問を用意することが、理解度確認としての実効性を高める。

実技が要る教育の扱い

実技を伴う特別教育(たとえばフルハーネス型墜落制止用器具の特別教育など)は、学科部分をeラーニングで行い、実技部分を対面で行うという組み合わせが実務では見られる。学科と実技を完全に分離できるかどうかは教育の種類によって異なり、実技を欠いたまま学科のみで代替できるとは限らない。

どの科目が対面での実技を要するのか、学科と実技をどこまで分離してよいのかという解釈は、教育の種類ごとに異なる。この判断を誤ると、実施したはずの特別教育が要件を満たしていないことになりかねないため、個別の教育について迷う場合は、講習を委託する教育機関または所轄の労働基準監督署に確認するべきである。

通信環境という現実

現場は必ずしも通信環境が安定しているとは限らない。山間部や地下、鉄骨に囲まれた場所では、動画のストリーミングが途切れることがある。eラーニングを前提にした教育計画を立てる際は、通信環境が不安定な現場でも実施できる代替手段(ダウンロード再生、オフライン対応の教材など)を用意しておく必要がある。

通信環境が原因で教育を最後まで受けられなかった作業者を、受講済みとして記録してしまうと、記録の正確性が損なわれる。視聴が完了したかどうかを、システム側で確認できる仕組みにしておくことが望ましい。

現場によっては、休憩所に共通の端末を1台用意し、そこで交代しながら視聴する運用も見られる。個人のスマートフォンを持たない作業者がいる現場では、こうした共通端末での対応も検討に値する。1台の端末を複数人で使い回す場合は、視聴した人ごとに記録を分けて残す工夫が別途必要になる。

記録の様式

特別教育については、労働安全衛生規則第38条が、受講者・科目等の記録を作成し、3年間保存することを義務づけている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。eラーニングで実施した場合であっても、この記録義務は変わらない。

記録に残すべき項目は、対面の教育と同様に、実施日・実施内容・受講者の氏名と所属・実施(視聴)を確認できる情報である。これに加えて、eラーニングの場合は、視聴の完了を確認した方法や、理解度を確認した設問の内容も記録に含めておくと、実施した教育の実効性を後から説明しやすくなる。

日々の教育記録をどう残すかは、毎日のKY活動を記録に変えるにまとめている。安全教育アプリを選ぶ際に確認すべき軸は、安全教育アプリの選び方で扱っている。

本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、専門家または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。


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よくある質問

Q. 特別教育をすべてeラーニングで済ませることはできますか

教育の種類によって異なります。実技を伴う科目については対面での実施が前提と解釈されており、学科部分のみをeラーニングで代替できるかどうかも教育ごとに判断が分かれます。個別の判断は所轄の労働基準監督署にご確認ください。

Q. eラーニングの受講記録は、何を残しておけばよいですか

実施日・実施内容・受講者の氏名と所属に加えて、視聴が完了したことを確認した方法や、理解度を確認する設問の内容を記録しておくと、実施した教育の実効性を説明しやすくなります。

Q. 動画を見ただけで、理解度の確認をしなくても問題ありませんか

視聴した事実だけでは、内容を理解したかどうかを示す記録として弱くなります。可能であれば、視聴後に簡単な設問へ回答させ、その結果も記録に残す運用が望まれます。

Q. 通信環境が不安定な現場では、どう対応すればよいですか

オフラインでも再生できる教材や、通信環境が安定した場所でまとめて視聴する運用など、代替手段をあらかじめ用意しておくことが望まれます。視聴が完了しなかった場合は、受講済みとして記録しないよう注意してください。

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