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年間の安全衛生教育計画をどう作るか|法定と任意教育の切り分け方

約6分で読めます 安全ドリル+編集部
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共通の現場で起きる熱中症の場面(安全ドリル+の教材より)
安全ドリル+の教材より

労働安全衛生法が求める法定教育を棚卸しし、任意の教育と組み合わせて年間計画にする考え方を整理しました。実施記録との対応づけまで扱います。

新規入場者教育、職長教育、特別教育、月1回の安全大会。現場で行われる教育は種類が多く、思いついたときに単発で実施していると、いつ何をやったのか、誰が受けていないのかが分からなくなる。

この記事では、法定教育を漏れなく棚卸ししたうえで、任意の教育と組み合わせて年間計画にする考え方を整理する。

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教育計画が要る理由

安全衛生教育は、思い出したときに実施するものではなく、あらかじめ実施時期を決めておくべきものである。理由は大きく2つある。

1つは、法定教育には実施すべきタイミングが決まっているものが多く、後回しにすると法令違反の状態が続いてしまうことである。労働安全衛生法は、雇入れ時・作業内容の変更時・危険有害業務への配置時に、それぞれ教育を行うことを事業者に義務づけている(同法第59条、出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。人の入れ替わりが多い建設現場では、この「タイミング」を見落としやすい。

もう1つは、思いつきで実施する教育は、記録が散逸しやすいことである。年間の計画があれば、いつ・何を・誰に対して実施する予定だったかが先に決まっているため、実施記録との突き合わせがしやすくなる。

法定教育の棚卸し

計画を作る最初のステップは、自社が実施すべき法定教育を洗い出すことである。労働安全衛生法第59条は、雇入れ時教育(第1項)、作業内容変更時の教育(第2項)、危険有害業務に就かせる際の特別教育(第3項)を定めている。同法第60条は、新たに職長など作業者を直接指導・監督する者になる際の教育を、対象業種について義務づけている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。

これに加えて、危険または有害な業務にすでに就いている者への教育(能力向上教育)を行うよう努めることが、同法第60条の2で事業者の努力義務として定められている。義務としての教育と、努力義務としての教育を区別して棚卸ししておくと、優先順位をつけやすくなる。

自社が扱う作業に対応する特別教育の一覧を洗い出す作業は、一度作れば毎年使い回せる土台になる。抜け漏れがないか、対象業務の追加・変更がないかを、年に一度は見直すとよい。

棚卸しの際によくある見落としは、既存の作業員だけを対象に考えてしまい、年度の途中で入職する新規採用者や、配置転換で新しい業務に就く人を計画に組み込み忘れることである。棚卸しは「今いる人」だけでなく「今後増える人・業務が変わる人」まで見据えて行う必要がある。

任意教育をどこまで足すか

法定教育だけを実施していれば十分というわけではない。KY活動や安全大会、季節ごとの注意喚起(熱中症、積雪期の対策など)は、法令が個別に義務づけているものではないが、実務上は欠かせない教育として多くの現場で継続されている。

任意教育をどこまで足すかは、現場の実情に応じて判断する部分になる。すべてを網羅しようとすると、教育の量が現場の負担になり、結局は形骸化してしまう。法定教育を土台としたうえで、自社の災害傾向や、季節・工程に応じたリスクを踏まえて、優先度の高いものから任意教育を積み増していく考え方が現実的である。

月ごとに割り付ける

洗い出した教育項目を、年間のカレンダーに割り付けていく。新規入場者教育のように随時発生するものと、職長教育の再教育のように周期が決まっているもの、季節に応じた注意喚起のように時期が固定されるものを、それぞれ異なる扱いで計画に組み込む必要がある。

割り付けの際は、繁忙期に教育が集中しないよう分散させることも重要である。工程が詰まっている時期にまとめて教育を行おうとすると、後回しにされやすく、結局は実施漏れにつながる。

実施記録との対応

計画を立てるだけでは、実施したかどうかは分からない。計画表と実施記録を突き合わせられる形にしておく必要がある。

具体的には、計画表の各項目に、実施予定日・対象者・実施内容を記載しておき、実施後にその項目へ実施日と受講者を記録として追記していく運用が考えられる。特別教育については、労働安全衛生規則第38条が受講者・科目等の記録を作成し、3年間保存することを定めている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。計画と記録が別々の書類で管理されていると、突き合わせの手間がかかり、結局どちらか一方が形骸化しやすい。

未受講者の追跡

計画通りに教育を実施しても、当日欠勤していた作業者や、途中入場した作業者は受講できていない場合がある。未受講者を放置すると、法定教育が必要な業務に、教育を受けていない状態のまま従事させてしまうリスクが残る。

未受講者を追跡する仕組みとしては、対象者名簿と実施記録を突き合わせ、受講していない者を可視化することが基本になる。名簿の管理を個人の記憶や紙の一覧に頼っていると、協力会社の作業者が多い現場ほど追跡が難しくなる。

未受講者への対応も、あらかじめ決めておく必要がある。次回の実施日を待つのか、個別に補講する場を設けるのかによって、対象者が抜け落ちたままになる期間が変わる。「気づいたら対応する」ではなく、未受講者が出た場合の手順そのものを計画に組み込んでおくと、対応が後手に回りにくい。

計画の見直し

年間計画は、一度作って終わりではない。工程の変更、新しい機械の導入、災害の発生など、計画時には想定していなかった事情が年度の途中で生じることは珍しくない。

見直しのタイミングとしては、四半期ごとの定期的な確認に加えて、災害やヒヤリハットが発生した直後、新しい作業が追加されたタイミングなどが挙げられる。計画を固定的なものとして扱わず、実情に応じて更新し続ける前提で運用することが、形だけの計画で終わらせないための要点になる。

計画の見直しを担当者一人に任せきりにすると、その人が異動・退職した時点で計画自体が止まってしまう。誰が計画を更新する役割を担うのかをあらかじめ決めておき、引き継ぎの際には計画表そのものを一緒に引き継ぐ運用にしておくと、担当者が変わっても計画が途切れにくくなる。

日々の教育記録をどう残すかという実務面は、毎日のKY活動を記録に変えるで整理している。資格や再教育の期限管理については、資格と再教育の期限を管理するで扱う。

本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、専門家または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。


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よくある質問

Q. 年間教育計画に決まった様式はありますか

法令が様式を定めているわけではありません。実施予定日・対象者・実施内容・実施記録を対応づけて管理できれば、様式は自社に合ったものを選んで構いません。

Q. 法定教育と任意教育を同じ計画表で管理してよいですか

問題ありません。義務としての教育と努力義務・任意の教育を区別できるよう記載しておけば、優先順位の判断がしやすくなります。

Q. 協力会社の作業者の教育は、誰が計画を立てるべきですか

法令上、協力会社の労働者に対する教育は、雇用する事業者が実施責任を負います。ただし元請が現場全体の安全管理として、実施状況を確認・把握する体制を持つことも実務上は広く行われています。

Q. 教育計画を見直す頻度に決まりはありますか

法令上の定めはありません。実務では四半期ごとの見直しに加え、災害の発生や新しい作業の追加といった変化があったタイミングで随時見直す運用が現実的です。

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