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騒音性難聴は元に戻らない|測定・保護具・健診の3点で防ぐ

約6分で読めます 安全ドリル+編集部
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共通の現場で起きる熱中症の場面(安全ドリル+の教材より)
安全ドリル+の教材より

騒音性難聴の特徴と、労働安全衛生規則が定める測定・保護具の義務、健康診断の位置づけを整理しました。建設現場で騒音が高い作業も挙げます。

「耳鳴りがするが、そのうち治まるだろう」。大きな音を長く扱う現場では、こうした感覚に慣れてしまうことがある。しかし騒音による難聴は、風邪のように自然に治まるものではない。

この記事では、騒音性難聴がどのような仕組みで起き、なぜ治らないのか、そして労働安全衛生規則が事業者に何を求めているのかを整理する。

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騒音性難聴の特徴

騒音性難聴とは、大きな音に繰り返しさらされることで内耳の有毛細胞が損傷し、聴力が徐々に低下していく難聴のことである。

この難聴の厄介な点は、進行が緩やかで、本人が自覚しにくいことにある。片方の耳だけが早く進むことは少なく、両耳がほぼ同時に、少しずつ聞こえにくくなっていく。初期には高い音域から聞こえにくくなるため、日常会話には支障を感じにくく、気づいたときにはすでに進行しているケースが多い。

さらに重要なのは、いったん失われた聴力が、他の多くの疾患と違って治療で回復しない点である。有毛細胞は一度壊れると再生しない。予防以外に打つ手がないという性質が、この難聴を特別なものにしている。

建設現場で騒音が高い作業

工事現場で著しい騒音を発する作業として代表的なのは、はつり作業に使うブレーカーやピック、コンクリートカッター、削岩機、杭打ち機、発電機やコンプレッサーの近くでの作業などである。屋内の狭い空間で反響を伴う作業も、体感する騒音が大きくなりやすい。

こうした作業に日常的に従事する人ほど、騒音性難聴のリスクが高まる。一時的に大きな音にさらされる作業と、毎日長時間さらされる作業とでは、耳への負担がまったく異なる。自分の作業が「著しい騒音を発する業務」に当たるかどうかを、まず認識しておく必要がある。

等価騒音レベルの測定

労働安全衛生規則は、著しい騒音を発する屋内作業場について、具体的な測定義務を定めている。

同規則第590条は、対象となる屋内作業場について、6か月以内ごとに1回、定期に、等価騒音レベルを測定しなければならないと定めている。測定を行ったときは、測定日時・測定方法・測定箇所・測定条件・測定結果・実施者の氏名などを記録し、3年間保存することも求められている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。

対象となる作業場は同規則第588条が列挙しており、ボイラー製造などの著しい騒音を発する場所のほか、坑内の作業場なども含まれる。また、施設や設備を変更した場合、あるいは作業工程や作業方法を変更した場合には、遅滞なく測定をやり直すことも同規則第591条で求められている。事業者はさらに、強烈な騒音を発する屋内作業場であることを、見やすい箇所に標識で明示する義務も負う(同規則第583条の2)。

測定は一度行えば終わりではなく、現場の状況が変わるたびに見直す性質のものだと理解しておく必要がある。

保護具の選択と装着

労働安全衛生規則第595条は、強烈な騒音を発する場所における業務について、事業者が耳栓その他の保護具を備えなければならないと定めている。保護具の使用を命じたときは、その旨を作業中の労働者が容易に知ることができるよう、見やすい場所に掲示することも義務づけられている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。

保護具そのものが備えられていても、正しく装着されていなければ効果は限定的である。耳栓は耳の穴に合わないサイズを使うと隙間から音が入り、期待した減衰効果を得られない。イヤーマフも、髪や保護帽のあごひもが挟まると密閉性が落ちる。備えることと、正しく使わせることは別の課題として扱う必要がある。

会話や合図の声が聞こえにくくなることを理由に、保護具を装着したがらない作業者がいる現場もある。この場合は、遮音性能を保ちながら会話をしやすくした製品を選ぶなど、装着そのものを避ける方向ではなく、装着しやすい環境を整える方向で解決を図るのが望ましい。

聴力検査をいつやるか

聴力検査には、すべての労働者を対象にした一般的な検査と、騒音業務に着目した検査という、性質の異なる2つの流れがある。

労働安全衛生規則第43条・第44条は、雇入時および1年以内ごとに1回の定期健康診断の項目として、聴力の検査を挙げている。検査対象となる周波数は千ヘルツおよび四千ヘルツの音であり、四千ヘルツの音は高い音域の聞こえにくさを捉えるためのものである(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。これは騒音業務に限らず、常時使用するすべての労働者を対象にした一般健康診断の一部である。

一方、厚生労働省が示す騒音障害防止のためのガイドラインは、著しい騒音を発する業務に常時従事する労働者について、この一般健康診断とは別に、より詳しい聴力検査を行うことを求めている。ガイドラインは法律のように罰則を伴う義務ではなく、行政が事業者に取り組みを促す指針という位置づけである。ただし、聴力の変化を早期に見つける手段としての意味は大きく、対象業務に該当する場合は積極的に取り入れることが望ましい。

作業時間で区切る運用

騒音対策は、測定と保護具だけで完結するものではない。同じ音圧の作業でも、連続してさらされる時間が長いほど、耳への負担は大きくなる。

現場でできる工夫としては、著しい騒音を発する作業を1人が連続して担当する時間を区切り、交代で担当する運用がある。長時間ブレーカーを持ち続ける作業を、複数人で分担するだけでも、1人あたりの被ばく時間は短くなる。休憩を挟むタイミングも、体力面だけでなく耳への負担という観点から見直す価値がある。

保護具の装着を徹底したうえで、さらに作業時間そのものを管理することが、聴力を守るための現実的な組み合わせになる。

教育で伝えること

騒音性難聴の対策で難しいのは、痛みを伴わず、進行がゆっくりであるがゆえに、当事者の危機感が育ちにくいことである。教育で伝えるべきは、測定値や規則の条文そのものよりも、「治らない」という一点に尽きる。

聞こえにくさを自覚した時点で、すでに相当程度進行している可能性があること、耳鳴りや会話の聞き取りにくさを軽視しないこと、保護具は面倒でも毎回装着することを、繰り返し伝える必要がある。同じ注意喚起を漫然と繰り返すのではなく、その日の作業内容に合わせて、著しい騒音を発する作業があるかどうかを毎回確認する習慣にすると、意識が続きやすい。

日々の教育をどう記録に残すかは、毎日のKY活動を記録に変えるで整理している。手持ち工具が原因となる振動障害については、振動障害とチェーンソーの使用時間にまとめている。

本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、専門家または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。


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よくある質問

Q. 耳栓とイヤーマフはどちらを選べばよいですか

作業内容や作業者の体質によって適否が分かれます。耳への装着感を嫌う人には耳を覆うイヤーマフが向く場合があり、保護帽との併用を考えるなら干渉しにくい耳栓が向く場合もあります。実際に試着したうえで選ぶことが望まれます。

Q. 騒音性難聴かどうかは、自分で判断できますか

耳鳴りや会話の聞き取りにくさに気づいた段階では、すでに進行している可能性があります。自己判断せず、健康診断の聴力検査の結果を確認し、異常があれば医師に相談してください。

Q. 等価騒音レベルの測定は自社で行えますか

測定機器と測定方法の知識があれば実施は可能ですが、専門の測定業者や作業環境測定士に依頼する事業場も多くあります。個別の実施方法については、所轄の労働基準監督署にご確認ください。

Q. 保護具を着けていれば、騒音対策としては十分ですか

保護具の装着は重要な対策の一つですが、対策の全体像は測定・保護具・作業時間の管理を組み合わせて成り立ちます。いずれか一つに頼らず、複数の対策を組み合わせることが望まれます。

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