仮設電気の感電災害は、死亡者数だけを見れば飛来・落下や墜落・転落ほど目立ちません。しかし休業4日以上の死傷者数で見ると、建設業だけで年間40件を超える規模で発生しています。厚生労働省が公表した令和7年の労働災害発生状況(確定値)によると、建設業の感電による死傷者数は43人、死亡者数は6人でした。全産業では死傷者数94人、死亡者数10人です(厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」、2026年5月公表)。
件数だけを見れば少なく感じるかもしれません。しかし感電災害は他の型と違い、一度の接触で重篤化しやすいという特徴があります。この記事では、現場所長が毎朝の巡回で分電盤を見るだけで判断できる3点確認――漏電遮断器・接地・コードに絞って、根拠となる法令とあわせて整理します。
感電対策の多くは「分電盤を見て気づけたか」で結果が変わります。安全ドリル+は現場のQRを読むだけで、当日の工種に合わせた10秒動画を朝礼前に流せます。
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仮設電気の感電災害とは
仮設電気とは、工事期間中だけ設置される分電盤・配線・照明・電動工具用のコンセント設備を指す。本設の電気設備と違い、工程が進むたびに増設・移設・撤去を繰り返す点が特徴です。
この「動く」性質が、感電災害の起きやすさに直結します。移動を繰り返すたびに配線の被覆が擦れて劣化し、屋外の雨水にさらされ、資材の搬入や重機の通行でコードが踏まれます。本設の電気設備であれば起きにくい劣化が、仮設ではむしろ日常的に発生します。
厚生労働省の職場のあんぜんサイトに掲載された災害事例では、脚立の脚が仮設配線を踏んだことで被覆が剥がれ、脚立に乗っていた作業者と、救助しようとした作業者の計4人が感電する事故が報告されています。原因として、仮設配線の絶縁被覆が万全でなく養生もされていなかった点が挙げられています(厚生労働省「職場のあんぜんサイト」災害事例)。この事例が示すとおり、感電は被災者本人の作業ミスではなく、配線の状態が放置されたことで起きるケースが目立ちます。
なぜ分電盤の3点確認なのか
分電盤とは、仮設電気の配線が集約され、漏電遮断器を通じて各回路に電気が分配される設備である。現場に複数ある電気設備のうち、分電盤は唯一「まとめて」状態を確認できる場所です。
コード1本ずつの被覆を隅々まで点検するには時間がかかります。しかし分電盤であれば、遮断器の表示・接地線の接続・引き出し口のコードの状態という3点を、巡回のついでに30秒ほどで確認できます。網羅的な点検を電気工事業者に定期的に依頼しつつ、日々の変化には所長自身が分電盤で気づくという役割分担が現実的です。
確認1: 漏電遮断器が正しく設置・動作しているか
漏電遮断器(ELCB)とは、電路に漏電が生じた際に自動で電気を遮断し、感電や火災を防ぐ装置である。労働安全衛生規則第333条は、対地電圧150ボルトを超える移動式・可搬式の電動機械器具については、感電防止用漏電しゃ断装置を接続しなければならないと定めています。
現場で確認すべき点は次のとおりです。
- 分電盤の各回路に漏電遮断器が設置されているか(延長コードの先に直接工具をつなぎ、遮断器を経由していない回路がないか)
- 遮断器に「テストボタン」があるか。あれば月1回程度、ボタンを押して確実に遮断するかを確認する
- 定格感度電流30ミリアンペア以下、動作時間0.1秒以内の「高感度高速形」が使われているか
テストボタンを押しても遮断しない、あるいはボタン自体が壊れている遮断器は、正常に見えても機能していない可能性があります。分電盤を見た際、遮断器の型式表示とテストボタンの有無をあわせて確認する習慣が有効です。
確認2: 接地(アース)が外れていないか
接地(アース)とは、電気機械器具の金属製の外わくなどを地面と電気的につなぎ、漏電時の電位を下げて感電の危険を減らす措置である。労働安全衛生規則第333条は、漏電遮断器の接続が困難な場合の代替措置として、電動機械器具の金属部分を接地して使用することを認めています。
分電盤での確認ポイントは次のとおりです。
- 分電盤の接地端子に、緑色または緑/黄色の接地線が確実に接続されているか
- 接地線が途中で切断・腐食していないか。とくに屋外に露出している区間は目視で確認する
- 移設・増設のたびに、接地線をつなぎ直す作業が漏れていないか
接地は「一度つないだら終わり」ではありません。仮設電気は分電盤ごと移動することが多く、そのたびに接地線のつなぎ直しが発生します。移設後の最初の巡回で、接地線の接続を確認する運用を工程に組み込んでおくと、つなぎ忘れに気づきやすくなります。
分電盤の3点確認を、朝礼前の習慣に
漏電遮断器・接地・コードの3点は、知識としては現場所長の誰もが知っています。問題は、忙しい朝に毎回思い出して確認できるかどうかです。安全ドリル+は10秒動画5本と記名テスト1問で構成され、所要は朝礼前の1分半です。当日の工種に合わせた確認事項を、毎日短く繰り返す形に向いています。
確認3: コードの被覆・接続部に損傷や水濡れがないか
移動電線(キャブタイヤケーブル等)とは、仮設電気の中で最も物理的な負荷を受ける部分である。分電盤から引き出され、資材の搬入・重機の通行・人の往来がある通路をまたぐことが多く、被覆の損傷が起きやすい箇所です。
確認すべき点は次のとおりです。
- 分電盤から出ているコードの被覆に、亀裂・擦り傷・変色がないか
- コネクタ(差込口)部分に防水キャップが付いているか、水たまりの中に接続部が沈んでいないか
- 通路をまたぐ区間に、養生(コードカバーや配線ダクト)が設置されているか
先述の脚立感電事故は、まさにこの区間で起きています。通路をまたぐコードは、踏まれることを前提に養生するか、そもそも踏まれない高さ・ルートに変更するかのどちらかが必要です。「注意して歩く」という個人の注意力に頼った運用は、繰り返し起きる災害の典型的な背景です。
毎朝30秒でできる3点確認の手順
分電盤を見る際、次の順番で確認すると抜けが減ります。
- 遮断器:各回路に漏電遮断器が入っているか、型式表示に感度電流30mA・動作時間0.1秒の表示があるか
- 接地:接地端子に接地線が接続されているか、緑色の被覆が破れていないか
- コード:分電盤から出ている引き出し口のコードに、被覆の損傷や水濡れがないか
工程が進むたびに分電盤の位置や配線ルートは変わります。前日と同じ確認で終わらせず、「今日はどこにコードが新しく通っているか」を毎回問い直すことが、この3点確認を形骸化させないための要点です。
本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、電気工事士・専門業者または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。
まとめ
- 感電による死傷者数は令和7年で建設業43人、死亡者数6人。全産業では死傷者数94人、死亡者数10人です(厚生労働省、令和7年確定値)
- 仮設電気は移設・増設を繰り返すため、本設の電気設備より被覆の損傷や接続不良が起きやすい構造です
- 確認1(漏電遮断器):定格感度電流30mA以下・動作時間0.1秒以内の高感度高速形が入っているか、テストボタンで動作するか
- 確認2(接地):接地端子に接地線が確実に接続され、被覆が破れていないか
- 確認3(コード):被覆の損傷・水濡れ・通路をまたぐ区間の養生の有無
- 3点とも分電盤を見れば30秒ほどで確認できます。工程が進むたびに配線ルートが変わるため、毎回問い直す運用が要点です
なお、ヒヤリハットの収集は姉妹アプリの安全ポスト+が担う。現場と組織の登録は2つのアプリで共有している。
実際の画面を1分半で試す
QRを読むと10秒の映像が5本流れ、最後の1問だけが記名の記録として残ります。 アプリのインストールもログインも要りません。
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- サービスガイド(PDF) — 導入の流れと記録の様式
- 料金 — 1現場あたりの月額
よくある質問
Q. 漏電遮断器はすべての仮設電気設備に必要ですか
労働安全衛生規則第333条は、対地電圧150ボルトを超える移動式・可搬式の電動機械器具、または導電性の高い場所で使用する機器を対象としています。ただし、非接地方式の電路で使用する場合や二重絶縁構造の機器など、第334条で適用が除外されるケースもあります。設備の種類ごとに該当するか確認が必要です。
Q. 漏電遮断器と接地は両方必要ですか、どちらか一方でよいですか
労働安全衛生規則第333条は、漏電遮断器の接続を原則としつつ、それが困難な場合の代替措置として接地を認める構成になっています。両方を備えるほうが安全側ですが、条文上は状況に応じた選択が想定されています。
Q. テストボタンがない古い遮断器を使い続けても問題ありませんか
テストボタンの有無は法令上の設置義務そのものではありませんが、動作確認の手段がないと不具合に気づけません。定期的な絶縁抵抗測定や電気工事業者による点検で代替する必要があります。
Q. コードが水たまりに浸かっている場合、すぐに使用を止めるべきですか
被覆に損傷がなくても、コネクタ部分が水没している状態は感電のリスクが高いと考えられます。使用を中断し、排水または配線ルートの変更、防水性のあるコネクタへの交換を検討してください。
Q. 3点確認は誰が行うべきですか
日常的な目視確認は現場所長や職長が巡回の一環として行い、絶縁抵抗の測定や遮断器の内部点検といった専門的な作業は、電気工事士や低圧電気取扱業務の特別教育を修了した者が担う役割分担が一般的です。