「うちの現場はTBM-KYをやっている」と言う人もいれば、「TBMとKYは別物」と言う人もいる。
現場でよく使われるこの二つの言葉は、しばしば同じ意味で使われるが、本来の定義は異なる。違いを理解しないまま運用すると、どちらか一方の機能が抜け落ちたまま「やったつもり」の朝礼が続くことになる。
この記事では、TBMとKY活動それぞれの定義を確認し、違いと組み合わせ方を整理する。
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この足元の どこが 危ない?
TBMとは
TBMとは、作業開始前に道具箱のそばで行う打合せを指す言葉である。
TBM(Tool Box Meeting)は、その日の作業内容や使用する道具を共有するために行われる。周囲の危険箇所の共有もここに含まれる。
厚生労働省の資料は、TBMを「職場で行う作業開始前の打合せ」と説明している。名前の由来は「ツールボックス=道具箱」の近くで行われることにある(出典:厚生労働省岐阜労働局、解説:tebiki.jp)。
実施時間の目安は5〜10分程度とされ、作業開始前だけでなく、昼休憩明けや作業の切り替え時にも行われる。TBMが扱う対象は幅広く、段取りの確認、資材や道具の状況、体調確認までを含む。
KYとは
KYとは、作業に潜む危険をあらかじめ話し合い、行動する前に解決しておく活動を指す。
KY(危険予知)は、中央労働災害防止協会(中災防)が長年推進してきた安全活動の手法である。訓練として体系化したものはKYT(危険予知訓練)と呼ばれる。中災防による定義は次のとおりである(出典:中央労働災害防止協会)。
職場や作業の状況のなかにひそむ危険要因とそれが引き起こす現象を、イラストシートや実際の作業を通じて小集団で話し合い、考え合い、分かり合って、危険のポイントや重点実施項目を指差唱和・指差呼称で確認して、行動する前に解決する訓練
要は、危険を頭で分かるだけでなく、指差し呼称までして体に落とし込むところに特徴がある。
体系立てて行う場合は「基礎4ラウンド法」が使われる。現状把握、本質追究、対策樹立、目標設定の4段階を踏む方法である。1テーマあたり10〜30分、3〜6人程度の小集団で行うのが目安とされる(出典:sekokan-base.com)。
両者の違い(表)
TBMとKYは、扱う範囲と目的が異なる。
| TBM | KY | |
|---|---|---|
| 主な目的 | 作業内容・段取りの共有 | 危険の洗い出しと対策 |
| 扱う範囲 | 道具・資材・体調・連絡事項を含む全般 | その日の作業に潜む危険要因のみ |
| 進め方 | 口頭での打合せが中心 | イラストシートや実演を使う小集団討議 |
| 所要時間の目安 | 5〜10分 | 4ラウンド法で1テーマ10〜30分 |
| 推進主体 | 厚生労働省の資料で解説 | 中央労働災害防止協会が推進 |
TBMは「段取りの共有」に軸足があり、KYは「危険の洗い出しと対策」に軸足がある。危険に一言も触れずTBMを終える現場もあれば、段取りを共有せずKYだけ行う現場もある。どちらも、本来の目的の半分しか果たしていない。
TBM-KYとして一体運用する場合
TBM-KYとは、TBMの中にKYの要素を組み込み、一続きの流れとして運用する形を指す。
建設現場では、朝礼直後のTBMに続けてKYを行い、まとめて一つの活動として扱うことが一般的である。段取りを共有した直後に、その段取りに潜む危険を洗い出す流れは自然であり、別々に時間を取るより効率がよい。
ただし、TBM-KYという言葉の使われ方には幅がある。担当者が司会を務め、職人に危険ポイントを説明する形で運用する現場もある。一方、職人だけで話し合う形を指してTBM-KYと呼ぶ現場もある(出典:seko-kanri.com)。呼び方の細部より、「段取りの共有」と「危険の洗い出し」の両方が漏れなく行われているかを確認したほうがよい。
実務では、朝礼後のTBMとKYをまとめて15〜20分に収めるのが目安とされる(出典:sekokan-base.com)。この時間の中で両方の目的を果たす設計にしておく必要がある。
毎日やるべきはどちらか
結論から言えば、両方とも毎日必要である。ただし、毎日の運用と節目の運用は分けて考えたほうがよい。
TBMは、作業内容が日々変わる以上、毎日行う以外の選択肢がない。段取りが共有されないまま作業に入ることは、それ自体がリスクになる。
KYについては、正式な4ラウンド法をすべて毎日行う現場は多くない。1テーマ10〜30分という時間は、日々の朝礼の中では確保しづらいためである。多くの現場では、簡易化した形で毎日のKYを回し、4ラウンド法のような重い形式は月次の安全大会など節目に位置づけている。
毎日の簡易版で欠けやすいのは、「危険を提示する」だけで終わり、「対策を考えさせる」段階が抜け落ちることである。提示だけでは受け身の情報伝達にとどまり、危険を予知する訓練にはならない。短い時間でも、問いを立てて答えてもらう動作を残すことが要点になる。
記録の残し方の違い
TBMとKYでは、記録として残すべき情報の性質も異なる。
TBMの記録は、その日誰が参加し、どんな連絡事項が共有されたかを示すものになる。参加者名と実施内容の記載が中心で、内容自体は日ごとに変わる連絡事項が多い。
KYの記録は、危険要因・対策・行動目標を残すKY活動表が一般的な様式になる。誰が、どの危険に対して、どう答えたかという個人単位の記録があると、あとから教育の実効性を検証しやすい。「参加者○名」とだけ書かれた記録では、誰が理解していたかを個別に確認できない。
安全ドリル+は、練習5本のあとに氏名と所属会社を記名する1問だけのテストを設けている。危険予知の問いに個別に答えた記録がそのまま残るため、KY活動の記録として機能する設計にしてある。
人数が多い現場での分割
人数が多い現場での分割とは、参加人数が多くKYが討議として機能しない場合に、班単位で運用を分ける工夫を指す。
KYT4ラウンド法は3〜6人程度の小集団を前提にした手法である。10人、20人が並ぶ朝礼の隊列にそのまま当てはめると、発言できるのは一部の人だけになり、大半は聞いているだけで終わる。
現場によっては、職種や作業班ごとに小さな単位へ分けてKYを行い、その後全体のTBMで段取りを共有する形を取る。分割が難しい現場では、全員に同じ問いを個別に投げかける方法がある。各自が答える形にすれば、人数が多くても一人ひとりの参加を確保しやすい。動画とテストの組み合わせであれば、隊列を分けなくても各自のスマートフォンで個別に完結できる。
なお、ヒヤリハットの収集は姉妹アプリの安全ポスト+が担う。現場と組織の登録は2つのアプリで共有している。
どちらを毎日回し、どう記録に残すかは毎日のKY活動を記録に変えるで整理している。
まとめ
- TBMは「段取りの共有」、KYは「危険の洗い出しと対策」に軸足がある。目的が異なるため、両方を毎日確保する必要がある
- TBMの実施時間は5〜10分、KYT4ラウンド法は1テーマ10〜30分が目安である。両方をそのままの尺で毎朝行うのは現実的ではなく、多くの現場は簡易版を日々回している
- 「TBM-KY」という呼び方の運用は現場によって幅がある。呼び方より、段取りの共有と危険の洗い出しの両方が漏れなく行われているかが要点になる
- 記録はTBMとKYで性質が異なる。個人単位で危険予知への回答が残る形にしておくと、教育の実効性をあとから検証しやすい
安全ドリル+は、現場のQRを読むだけで危険予知の動画教材を配信し、記名テストの結果をそのまま記録として残す仕組みです。TBMとKYの両方を毎日回すための土台として使えます。詳しくは安全ドリル+をご覧ください。
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よくある質問
Q. TBMとKYは、どちらか一方だけでも構いませんか。
A. どちらも目的が異なるため、片方だけでは機能が欠ける。段取りの共有と危険の洗い出しは、別の役割として両方確保したほうがよい。
Q. TBM-KYという呼び方は現場によって違いますか。
A. 違う。担当者が司会をする形と、職人だけで行う形の両方が「TBM-KY」と呼ばれている。呼び方より、段取りの共有と危険の洗い出しの両方が漏れなく行われているかを確認したほうがよい。
Q. 毎日KYT4ラウンド法をやるべきですか。
A. 必須ではない。1テーマ10〜30分という時間は、毎日の朝礼では確保しにくい。多くの現場は簡易版を日々回し、4ラウンド法は節目の訓練として位置づけている。
Q. 記録はTBMとKYで分けて残す必要がありますか。
A. 性質が異なるため、分けて残したほうが後から検証しやすい。TBMは参加者と連絡内容、KYは個人単位の危険予知への回答を残す形が望ましい。