安全教育の動画教材を用意しようとしたとき、最初に迷うのが内製するか購入するかである。どちらにも一長一短があり、決め手が分からないまま検討が止まることがある。
この記事では、内製と購入の分かれ目を「自社が扱う工種と災害の型をどれだけ揃える必要があるか」という基準で整理する。
安全ドリル+を1問だけ試す · 10秒の映像 → 3択
動画教材の内製と購入の違いとは
動画教材の内製とは、自社で撮影・編集を行い教材を制作すること、購入とは、既製の教材を提供する事業者と契約して利用することである。
両者の違いは、費用構造だけでなく、教材の中身をどこまで自社の実情に合わせられるかにある。
- 内製:自社の現場・設備・作業手順をそのまま映像化できる
- 購入:多くの現場で共通する内容を、既製の映像でまかなう
どちらが優れているという話ではなく、自社が必要とする教材の範囲と、揃える手段が合っているかで選ぶべきものである。
内製の負担
内製の負担とは、企画・撮影・編集・更新という一連の工程を自社の人員と時間で担うことである。
- 企画:どの作業のどの危険を取り上げるかを決める
- 撮影:実際の作業を安全に配慮しながら撮影する
- 編集:字幕・ナレーションを付け、視聴しやすい長さにまとめる
- 更新:法改正や作業手順の変更に合わせて作り直す
このうち見落とされやすいのが更新の負担である。一度作った教材は、法改正や新しい機械の導入があるたびに作り直しが必要になる。内製は初期の制作コストだけでなく、継続的な更新コストを見込んでおく必要がある。
撮影機材や編集ソフトの用意も内製の負担に含まれる。専門の担当者がいない会社では、外部の制作会社に一部の工程だけを委託する半内製という選択肢もある。すべてを自社で完結させる必要はない。
購入の制約
購入の制約とは、既製の教材が自社のすべての工種・災害の型を網羅しているとは限らないことである。
購入型の教材事業者は、多くの現場に共通する内容を優先して制作する。したがって、次のような制約が生じやすい。
- 発生件数の多い工種・災害の型は教材が充実している
- 自社特有の作業や、件数の少ない工種は教材が薄いことがある
- 自社の設備・手順に完全には一致しない映像になることがある
購入前に、自社が実際に扱う工種のリストと、教材の対応範囲を照らし合わせておく必要がある。
対応範囲を確認するときは、工種名だけで判断しないほうがよい。同じ「型枠工事」でも、使う機械や手順が会社によって異なる場合がある。実際の映像をサンプルとして見せてもらい、自社の作業と大きくかけ離れていないかを確認することが望ましい。
分かれ目は工種と災害の型の網羅度
内製と購入の分かれ目とは、自社が必要とする工種と災害の型の組み合わせを、既製教材がどれだけカバーしているかである。
| 状況 | 向く選択 |
|---|---|
| 扱う工種が少数で、既製教材が充実している | 購入 |
| 扱う工種が特殊で、既製教材にほぼ無い | 内製 |
| 工種は多岐にわたるが、共通する危険が多い | 購入+一部内製の併用 |
| 自社の設備・手順を正確に伝える必要がある | 内製 |
工種が多岐にわたる元請や、複数の専門工事を抱える会社ほど、購入だけで賄うのは難しくなる。逆に工種が限られ、既製教材で網羅できる会社では、内製の負担をかける必要性は薄い。
内製が向く会社、購入が向く会社
内製が向く会社とは、特殊な設備・手順を持ち、更新体制を継続できる会社である。購入が向く会社とは、一般的な工種が中心で、制作の人員を割けない会社である。
- 内製が向く:専用機械を使う、独自の作業手順がある、映像制作の担当者を置ける
- 購入が向く:一般的な建設・製造の工種が中心、少人数で安全教育の担当を兼務している
多くの中小の専門工事会社は、後者に近い。安全教育の担当者が他の業務を兼務していることが多く、継続的な内製の体制を維持するのは現実的に難しい。
判断に迷う場合は、まず1年間の教育計画を立て、そのうち何割を既製教材でまかなえるかを試算してみるとよい。カバーできない部分が2〜3割程度であれば、その部分だけを内製する併用型が現実的である。
購入型の弱点を正直に
購入型の弱点とは、扱う工種によって教材の充実度に差が出ることである。
正直に述べておくと、安全ドリル+を含む購入型の動画教材は、発生件数の多い工種を優先して教材を揃えている。そのため、扱う件数が少ない特殊な工種では、教材の本数が限られ、同じ映像が周期的に流れることがある。
この制約を避けるために、当日の工種に合わせるのは1本目だけとし、残りはランダムに選ぶという設計を取っている製品もある。同じ映像ばかりが並ぶ印象を薄めるための工夫だが、教材そのものが薄い工種では限界がある。購入を検討する際は、自社が最も多く扱う工種の教材本数を、契約前に具体的に確認しておくべきである。
教材の総数を尋ねるだけでは不十分で、自社が実際に使う工種に絞ったときの本数を尋ねる必要がある。全体では豊富に見えても、自社に関係する部分だけを見ると数本しかないということも起こり得る。
併用という選択肢
内製と購入の併用とは、共通する内容は購入でまかない、自社特有の内容だけを内製する考え方である。
- 一般的な工種・災害の型 → 購入型の教材を利用
- 自社特有の設備・手順 → 短い動画や写真で内製し、朝礼で個別に説明
すべてを内製する必要はなく、すべてを購入で賄う必要もない。自社にしかない危険源を洗い出し、そこだけを内製で補うという役割分担が、費用と手間の両面で現実的である。
併用を始める際は、まず購入型の教材で一通りの教育を回してみて、そこで抜け落ちている自社特有の危険源を洗い出すという順番が進めやすい。最初から完璧な組み合わせを狙わず、運用しながら補っていく発想でよい。
教材選びの前提となる記録の全体像は、毎日のKY活動を記録に変えるに整理している。
見積もりを取る段階で、対応工種のサンプル映像を必ず見せてもらうようにすると、契約後に「思っていた内容と違う」という食い違いを防ぎやすい。担当者の口頭説明だけを信じて契約しないことが、失敗を避ける最も確実な方法である。
まとめ
- 内製と購入の違いは、教材を自社の実情に合わせられるかどうかにある
- 内製は継続的な更新コストを見込む必要がある
- 購入は、扱う工種が既製教材でどれだけ網羅されているかで向き不向きが決まる
- 購入型は工種によって教材の充実度に差があり、薄い工種では映像が偏ることがある
- 共通する内容は購入、自社特有の内容は内製という併用が現実的な選択肢である
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よくある質問
Q. 内製と購入、費用が安いのはどちらですか?
一概には言えない。内製は初期の撮影・編集費用に加え継続的な更新の人件費がかかる。購入は月額・年額の費用がかかる代わりに更新の手間が要らない。総額で比較する必要がある。
Q. 購入型の教材で自社特有の作業をカバーできますか?
できないことが多い。自社特有の設備・手順は、購入型の既製教材ではなく、朝礼での個別説明や簡易な内製動画で補う必要がある。
Q. 内製する場合、撮影で気をつけることはありますか?
実際の作業を撮影する際は、危険な場面を再現するための無理な演出をしないこと。安全な状態での実演や、静止画・イラストでの説明に置き換えることも検討すべきである。
Q. 購入型の教材はどのくらいの頻度で更新されますか?
事業者によって異なる。法改正や新しい災害事例への対応頻度を、契約前に確認しておくとよい。
Q. 併用する場合、記録はどう管理すればよいですか?
購入型・内製のどちらで視聴したかにかかわらず、誰がいつ何を視聴したかを一元的に記録できる仕組みにしておくと、監査対応がしやすい。