自社に教育担当者を置けない現場では、安全教育を外部の講習機関やコンサルタントに委託する選択肢がある。委託そのものは珍しくないが、記録がどちらのものになるのか、契約を終えたあとに何が残るのかを詰めずに始めてしまう現場も多い。
労働安全衛生法は事業者に安全衛生教育の実施を義務づけている(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。教育すべき項目の詳細は労働安全衛生規則に定めがある(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。義務を負うのは委託した側の事業者であり、外注したことで責任そのものが移るわけではない。本稿では、外注するときに確認しておくべき点を整理する。
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外注できる教育・できない教育
外注できる教育とできない教育の境目は、内容が汎用的かどうかによる。
法定の技能講習や特別教育の多くは、登録教習機関が実施することが前提になっており、そもそも自社では実施できない性質のものである。一方、雇入れ時教育や作業内容変更時教育のように、自社の作業内容・現場の実情に即して行うべき教育は、外部の講師に任せる場合でも、自社固有の情報を伝える工程を省略できない。
外注先の標準教材だけで済ませてしまうと、その現場特有の危険源が抜け落ちる。外注する場合でも、自社の作業内容や設備に関する説明は、自社側が補う前提で設計する必要がある。
講師の要件
講師の要件は、教育の種類によって法令上の定めがある場合とない場合がある。
技能講習や特別教育の講師には、法令や通達で一定の要件が定められている教育がある。これに対し、任意で行う一般的な安全教育には、講師資格の明確な定めがない場合が多い。
定めがないからといって、誰でもよいわけではない。委託先を選ぶときは、講師の実務経験や、建設業・自社の業種に関する知見があるかを確認したい。座学の講師と、実技を伴う教育の講師とでは、求められる経験の種類が異なる点にも注意が必要である。
複数の講師を抱える委託先の場合、実際に自社の現場を担当する講師が誰になるのかを、契約前に確認しておくとよい。委託先の看板だけで判断すると、実際に来る講師の経験や説明の分かりやすさにばらつきが出る場合がある。可能であれば、初回だけでも講師の説明の様子を確認できる機会を設けたい。
記録は誰のものになるか
記録は誰のものになるかは、契約前に必ず取り決めておくべき事項である。
外注先が独自のシステムやフォーマットで記録を管理している場合、実施記録の原本が委託先のサーバーやクラウドに保管され、自社側は完了通知しか受け取らない、という運用も見られる。この状態で契約を終了すると、過去の実施記録に自社からアクセスできなくなる可能性がある。
この問題は、契約期間中は目立たない。委託先のシステムにログインすればいつでも記録を確認できるため、不便を感じる場面が少ないためである。問題が表面化するのは、監督署から数年前の記録提示を求められたときや、委託先を切り替えようとしたときであり、そのときには既に手遅れになっている場合がある。
教育記録は、労働基準監督署の調査や、災害発生時の説明に使う場面がある書類である。委託先が保有したままで終わる契約は避け、記録そのもの、あるいは記録の完全な写しを自社側でも保有できる条件を確認しておく必要がある。
様式が自社に合うか
様式が自社に合うかという確認は、記録の使い勝手を左右する。
外注先が用意する記録様式は、その委託先の標準フォーマットであることが多い。自社が他の教育記録(雇入れ時教育、職長教育、特別教育など)で使っている様式と項目が揃っていないと、後から一覧で管理する際に手間が増える。
氏名・所属会社・実施日・教育内容・理解度の確認結果など、自社の記録全体で共通させたい項目があるなら、外注先の様式がそれに対応できるかを事前に確認しておきたい。対応できない場合は、外注先の記録を受け取ったあとに自社側で転記する作業が発生し、外注した目的である負担軽減が薄れる。
受講者名簿と出面の突合
受講者名簿と出面の突合は、外注した教育であっても省略できない確認作業である。
外注先が発行する受講証明や名簿だけを見て「教育が完了した」と判断するのは早計である。実際にその日現場にいた作業員と、受講者名簿に記載された人が一致しているかを、自社側の出面記録と突き合わせて確認する必要がある。
とくに複数の協力会社が混在する現場では、受講者名簿の氏名だけでは所属会社まで特定できない場合がある。外注先に依頼する際は、氏名だけでなく所属会社まで記載する様式にしてもらうよう求めたい。
同姓同名や似た読みの氏名が複数の会社にまたがって存在することも珍しくない。外注先の名簿と自社の出面記録を突き合わせる作業を誰が担当するかも、あらかじめ決めておくべき役割分担である。担当を決めずに進めると、突合作業自体が抜け落ちたまま「受講済み」の記録だけが積み上がっていく。
解約したときに記録は残るか
解約したときに記録は残るかという確認は、契約継続中に聞きにくいが、最も重要な確認点の一つである。
クラウド型のシステムを提供する外注先の場合、契約終了と同時にアカウントが無効化され、過去の記録にアクセスできなくなる契約もある。労働安全衛生法に基づく教育記録は、監督署の調査や災害発生時の説明のために、一定期間の保管が前提になる書類である。
契約を結ぶ前に、解約後の記録の取り扱い(一定期間はアクセス可能か、書き出したデータを自社が受け取れるか)を確認事項に加えておくことを勧める。この確認を怠ると、外注先を切り替えたいと思ったときに、過去の記録だけが取り残される事態になりかねない。
とくに複数年にわたって同じ委託先を使い続けている現場では、切り替えのタイミングで初めてこの問題に気づくことが多い。契約更新のたびに記録の取り扱い条件を見直す機会を作っておくと、いざ切り替える必要が生じたときに慌てずに済む。
安全ドリル+はQRコードを配布するだけで教育を実施でき、記録は自社の監督者アカウントにひも付いて残る。外注先のシステムに記録が閉じ込められる構造を避けたい現場にとって、選択肢の一つになる。
外注と自社実施のどちらを選ぶにせよ、最終的に責任を負うのは自社であるという前提を忘れないことが、外注先選びの出発点になる。外注に頼らず自社で教育記録を運用する場合の基本は、教育記録の残し方で扱っている。日々の教育記録全体との関係は、毎日のKY活動を記録に変えるで整理している。
実際の画面を1分半で試す
QRを読むと10秒の映像が5本流れ、最後の1問だけが記名の記録として残ります。 アプリのインストールもログインも要りません。
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よくある質問
Q. 特別教育を外注した場合、自社での記録は不要になりますか
不要にはならない。実施の主体が外注先であっても、事業者としての実施義務は自社に残る。受講者名簿や修了証の写しは自社でも保管しておく必要がある。
Q. オンライン教材の配信だけを外注することはできますか
配信の仕組みだけを外部サービスに任せ、記録の管理は自社で行うという切り分けは可能である。契約前にどこまでが外注範囲かを明確にしておきたい。
Q. 外注先が倒産・撤退した場合、記録はどうなりますか
契約時に確認していなければ、記録が失われるリスクがある。重要な記録は自社側でも定期的に書き出し・保管しておくことが望ましい。
Q. 外注と自社実施を併用してもよいですか
問題ない。法定講習や特別教育は外注し、雇入れ時教育や日々のKY活動は自社で行う、という併用は一般的である。ただし記録の様式は揃えておきたい。