じん肺とは、粉じんを長期間吸入することで肺の組織が線維化し、呼吸機能が徐々に低下していく職業性の肺疾患をいいます。一度線維化した肺の組織はもとに戻らないため、じん肺は発症してから治す病気ではなく、発症させない・進行させないことを目指す病気です。この記事では、粉じん作業とじん肺の関係、特殊健康診断の頻度と記録の保存期間について整理します。
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粉じん作業とは
粉じん作業とは、粉じん障害防止規則が定める、鉱物・岩石・金属等を掘削・破砕・研磨する作業や、これらの作業が行われる場所での作業など、粉じんにさらされる作業を指します。粉じん障害防止規則第二条は、このうち一定の作業を「特定粉じん作業」として区分しています(出典:e-Gov法令検索 粉じん障害防止規則)。
建設業では、コンクリートの解体・破砕、トンネル工事の掘削、研磨作業などが粉じん作業に該当します。屋外の作業であっても、風向きや作業の密度によっては粉じん濃度が高くなる場面があり、屋内作業に限られるものではありません。
じん肺は治らない
じん肺は、吸入した粉じんが肺の組織に線維化を引き起こす病気です。線維化した組織は、粉じんへのばく露を止めたあとも元の状態には戻らず、進行を止めることはできても、失われた呼吸機能を回復させることはできません。
この不可逆性が、じん肺健康診断を重視する理由になっています。発症してから対処するのではなく、粉じんへのばく露そのものを減らし、早期の変化を健診で捉えて進行を防ぐという考え方が、制度全体の前提になっています。
特定粉じん作業と局所排気
特定粉じん作業に区分される作業を行う場合、粉じん障害防止規則は、局所排気装置の設置や、作業場所への注水・注油等による粉じんの発生抑制といった措置を求めています。局所排気装置は、粉じんが発生する場所の近くで直接吸引し、作業者が吸入する前に除去することを目的とした設備です。
全体換気だけに頼ると、発生した粉じんが作業場全体に拡散してから薄まるのを待つことになり、作業者が粉じんにさらされる時間は長くなります。特定粉じん作業に該当する作業では、発生源に近い場所での対策が優先されます。
じん肺健診の頻度
じん肺法第八条は、常時粉じん作業に従事する労働者に対して、原則として3年以内ごとに1回、定期的にじん肺健康診断を行わなければならないと定めています。ただし、じん肺管理区分が管理二又は管理三である労働者については、1年以内ごとに1回の頻度が求められます。粉じん作業以外の作業に従事するようになった労働者についても、管理区分に応じて3年又は1年ごとの健診が必要とされています(出典:e-Gov法令検索 じん肺法)。
じん肺法第七条は、新たに常時粉じん作業に従事することとなった労働者に対して、就業の際にじん肺健康診断を行うことも定めています(出典:e-Gov法令検索 じん肺法)。管理区分が進むほど健診の頻度が上がるという設計は、進行の兆候が見られた労働者ほど密に経過を追う必要があるという考え方に基づいています。
記録の保存期間
じん肺法第十七条は、事業者はじん肺健康診断に関する記録を作成し、この記録及びじん肺健康診断に係るエックス線写真を7年間保存しなければならないと定めています(出典:e-Gov法令検索 じん肺法)。
じん肺は進行が緩やかで、粉じんへのばく露から発症まで長い期間を要することがあります。7年間という保存期間は、労働者がその後に他の作業へ異動した場合や、退職後に健康状態を確認する必要が生じた場合に、過去の経過を追跡できるようにするための期間として位置づけられています。
呼吸用保護具の選び方
粉じん作業では、局所排気装置等の設備的な対策に加えて、呼吸用保護具の着用が求められる場面があります。防じんマスクは、粉じんの種類や濃度に応じて求められる性能が異なり、作業内容に合わない保護具を選ぶと、期待した効果が得られません。
保護具は着用しているかどうかだけでなく、顔にすき間なく密着しているかどうかによっても効果が大きく変わります。ひげがある、フィルターが目詰まりしているといった状態では、密着していても粉じんが漏れ込む場合があります。着用前に密着の状態を確認する習慣が必要です。
作業内容が変わればばく露する粉じんの種類も変わるため、保護具を一度選んだままにせず、作業が変わるたびに適した性能のものを選び直す運用も必要になります。現場で保護具を貸与する場合は、サイズが合っているかどうかも密着に影響するため、複数のサイズを用意しておくことが望ましいとされています。
離職後の健康管理手帳
じん肺のように進行が緩やかな疾患は、その業務から離れたあと、あるいは退職したあとに症状が現れることがあります。労働安全衛生法第六十七条は、がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務で政令が定めるものに従事していた者のうち、厚生労働省令が定める要件に該当する者に対して、離職の際又は離職の後に健康管理手帳を交付するものとしています(出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。
健康管理手帳を所持している者に対しては、政府が健康診断に関する必要な措置を行うことも定められています。粉じん作業に従事していた労働者が対象になりうるかどうかは、従事していた業務の内容や期間によって判断が分かれるため、個別の該当性は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
石綿を扱う解体作業については石綿を含む解体作業にまとめている。振動障害については振動障害と工具の使用時間を参照してほしい。
本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、社会保険労務士等の専門家、または所轄の労働基準監督署にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。
まとめ
- じん肺は肺の組織が線維化する病気で、ばく露を止めたあとも元には戻りません
- じん肺法第八条は、常時粉じん作業に従事する労働者に3年(管理二・三は1年)ごとの定期健診を義務づけています
- 第七条は、新たに粉じん作業に従事する際の就業時健診も義務づけています
- 第十七条は、健診記録とエックス線写真を7年間保存することを義務づけています
- 労働安全衛生法第六十七条は、要件に該当する者への離職後の健康管理手帳交付を定めています
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よくある質問
Q. じん肺健康診断はどの職種でも必要ですか
粉じん作業に常時従事する労働者が対象です。該当するかどうかは作業の内容によって判断が分かれるため、個別の該当性は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
Q. 管理区分が上がると、仕事内容は変わりますか
じん肺法は、健診の頻度が管理区分によって変わることを定めています。就業上の措置については、医師の意見を踏まえて事業者が判断する必要があります。
Q. 退職後にじん肺の症状が出た場合、どこに相談すればよいですか
健康管理手帳の対象に該当する場合は、手帳に基づく健康診断の制度があります。該当性の確認や相談先については、所轄の労働基準監督署にご確認ください。