安全ドリル+ 現場の安全教育を朝礼前の1分半で

フルハーネス義務化の「その後」|使い方の教育が抜けている現場

約7分で読めます 安全ドリル+編集部
フルハーネス墜落制止用器具特別教育ランヤード現場所長
高所の現場で起きる墜落の場面(安全ドリル+の教材より)
高所 墜落 安全ドリル+の教材より

フルハーネス義務化から数年後の現場に残る課題を整理。ランヤードの種別選定と落下距離の考え方を、特別教育の条文とあわせて解説します。

フルハーネス型墜落制止用器具の義務化から数年が経ち、装着そのものはほとんどの現場で定着しました。一方で、現場所長から聞こえてくる悩みは「装着しているのに、フックの掛け方が人によってばらばら」というものです。フルハーネスは正しく着るだけでは墜落を止められません。ランヤードをどこに掛けるかで、実際に落下する距離が大きく変わります。

この記事では、フルハーネス義務化の経緯を条文で確認したうえで、特別教育で教わったはずの「掛ける位置」の考え方、ランヤードの種別選定、落下距離の見積り方を、現場所長が今日の朝礼で使える形で整理します。

フックの掛け位置は、動画で見ないと伝わりにくい教育テーマです。安全ドリル+は、10秒の縦型動画でこうした「動作」の教育を毎日の習慣にする仕組みです。

安全ドリル+を1問だけ試す · 10秒の映像 → 3択

フルハーネス義務化の経緯とスケジュール

フルハーネス型墜落制止用器具に関する規定は、労働安全衛生法施行令の改正にともない、2019年2月1日に施行されました。それまで「安全帯」と呼ばれていた墜落防止用の器具は、この改正で「墜落制止用器具」という名称に変わり、フルハーネス型の使用を原則とする方向に規格が整理されました。

改正には経過措置が設けられ、施行日の2019年2月1日から2022年1月1日までの間は、改正前の規格に基づく胴ベルト型の器具も使用が認められていました。この経過措置は2022年1月1日で終了し、2022年1月2日以降は旧規格の器具を新たに使用することができなくなっています。

義務化から数年が経過した現在、現場に残っている課題は「フルハーネスを持っているか」ではなく、「どう使っているか」に移っています。特別教育を受講済みという記録があっても、フックの掛け位置についての理解が、受講から時間が経つほど薄れていく点は見落とされがちです。

特別教育の対象になる業務

フルハーネス型墜落制止用器具に関する特別教育は、労働安全衛生規則第36条第41号に定められています。同号は、高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところで、墜落制止用器具のうちフルハーネス型のものを用いて行う作業に係る業務に労働者を就かせるときは、特別教育を実施しなければならないとしています。

対象になるのは、フルハーネス型の器具を実際に使用する業務に就く労働者です。高さ2メートル以上で作業床の設置が困難な箇所での作業であっても、胴ベルト型のみを使用する業務であれば、この号の対象そのものにはなりません。ただし、後述するとおり胴ベルト型を使用できる高さには上限の目安があるため、現場でどちらの器具を使うかを決める時点で、対象業務かどうかも同時に判断する必要があります。

新規入場者への安全衛生教育とは別に、フルハーネス型を使用する業務に初めて就く労働者には、この特別教育の受講記録があるかを個別に確認しておくことが必要です。

「掛ける位置」が墜落距離を決める

フルハーネス特別教育で教える内容の中核は、装着方法そのものよりも、ランヤードのフックをどこに掛けるかという判断です。同じ高さで同じ器具を使っていても、フックを腰より高い位置に掛けるか、足元近くに掛けるかで、墜落したときの落下距離は大きく変わります。

フックの位置が高いほど、墜落してからランヤードが伸びきるまでの自由落下の距離は短くなります。逆に、フックを足元近くや自分より低い位置にしか掛けられない作業では、同じランヤードでも自由落下の距離が長くなり、下の階や地面に到達するまでの余裕が小さくなります。この余裕がどれだけ必要かを見積もらずに作業を始めることが、フルハーネスを着用していても墜落による負傷が起きる典型的な原因です。

厚生労働省が公表している墜落制止用器具に関するガイドラインでは、墜落制止用器具の使用にあたって、着用者が墜落した際に地面に到達するおそれがある場合は、フルハーネス型の使用を原則としつつ、高さ6.75メートル以下では胴ベルト型(一本つり)の使用も認められるとされています。この基準は、フックの位置や落下距離の見積りと合わせて理解しておく必要があります。

ランヤードの種別と選定の考え方

墜落制止用器具のランヤードは、取付設備との位置関係に応じて複数の種別が用意されています。選定の基本になるのは、フックを掛ける取付設備が、着用者の腰の高さより上にあるか下にあるかという条件です。

取付設備が腰より高い位置にある場合は、フックをその位置に掛けることで自由落下の距離を短く抑えられます。一方、足場の構造上、取付設備が腰より低い位置にしかない作業では、フックを低い位置に掛けざるを得ません。この場合は、自由落下の距離が長くなることを前提に、下方に十分な空間があるかを事前に確認する必要があります。

現場で選定を誤りやすいのは、「用意されているランヤードをとりあえず使う」という運用です。取付設備の高さと、そこで想定される落下距離を照らし合わせたうえで、その作業に適したランヤードを選ぶ判断が必要になります。判断に迷う場合は、器具のメーカーが公表している取扱説明書や、特別教育のテキストに記載された選定基準を作業前に確認する運用を、現場のルールとして定めておくことが実務的です。

落下距離の見積り方

フックを掛ける位置を決める前に確認すべきなのが、その位置で墜落した場合にどれだけの距離を落下するかという見積りです。考え方としては、次の要素を積み上げて確認します。

これらを合計した距離より下に、地面や下階の床、障害物がある場合、その位置での作業は危険と判断します。現場で実際に計算するのは手間がかかるため、多くの現場ではメーカーが公表している早見表や、特別教育で使用したテキストの計算例を作業前に確認する運用にしています。重要なのは、この確認を「特別教育を受けたときに一度やった」で終わらせず、取付設備の高さが変わる作業のたびに繰り返すことです。

特別教育を受けただけで終わらせない

特別教育は、フルハーネス型を用いる業務に労働者を就かせる前に一度実施すれば、法令上の要件を満たします。しかし、フックの掛け位置や落下距離の見積りは、受講した直後の理解がそのまま何年も維持されるとは限りません。取付設備の条件が現場ごとに変わる作業だからこそ、教育内容を思い出させる仕組みが必要になります。

安全ドリル+は、現場に掲示したQRコードを読むだけで、10秒の縦型動画5本と3択問題に取り組める仕組みです。最後の1問だけが氏名・所属会社を記名するテストになっており、これが教育実施記録として残ります。アプリのインストールもログインも不要で、所要時間は1分半です。フックの掛け位置のような「動作」の教育は静止画より動画の方が伝わりやすく、特別教育のような節目の教育を、毎日の短い積み重ねで補完する位置づけになります。無料でお試しいただけます。

なお、ヒヤリハットの収集は姉妹アプリの安全ポスト+が担う。現場と組織の登録は2つのアプリで共有している。

本記事は一般的な参考情報であり、法的・専門的な助言を提供するものではありません。法令の解釈・適用や個別事案への対応は、専門家または所轄の行政機関にご確認ください。記載内容は執筆時点の情報に基づきます。

まとめ


実際の画面を1分半で試す

QRを読むと10秒の映像が5本流れ、最後の1問だけが記名の記録として残ります。 アプリのインストールもログインも要りません。


よくある質問

Q. フルハーネスを着用していれば、フックをどこに掛けても安全ですか。

安全ではありません。フックを掛ける位置によって自由落下の距離が変わり、位置によっては下の階や地面に到達するおそれがあります。取付設備の高さに応じた落下距離の見積りが必要です。

Q. 高さ6.75メートル以下の作業では、フルハーネス型を使わなくてもよいですか。

厚生労働省のガイドラインでは、高さ6.75メートル以下では胴ベルト型(一本つり)の使用も認められています。ただし、フルハーネス型の使用を妨げるものではなく、現場の判断でフルハーネス型を選ぶことも可能です。

Q. 特別教育を受講済みの作業員に、追加の教育は必要ですか。

法令上、再受講の義務はありません。ただし、フックの掛け位置のような動作の理解は時間とともに薄れやすいため、現場での日常的な注意喚起で補完することが実務的です。

Q. ランヤードの種別は、現場で自由に選んでよいですか。

取付設備の高さや落下距離の見積りに応じて、適したランヤードを選ぶ必要があります。用意されている器具をとりあえず使うのではなく、作業前にメーカーの取扱説明書等で選定基準を確認する運用が求められます。

Q. 特別教育の科目には、実技は含まれますか。

労働安全衛生規則第36条第41号にもとづく特別教育の実施内容は、事業者が科目・時間数を定めて行うものです。具体的なカリキュラムは、実施する教育機関や自社の教育計画によって異なるため、実施前に教育内容が業務に対応しているかを確認する必要があります。

フルハーネス墜落制止用器具特別教育ランヤード現場所長